肝炎ウィルスは、A型(HAV)、B型(HBV)、C型(HCV)、D型(HDV)、E型(HEV)の5種類があります。A型とE型は、経口感染によるものです。B型とC型、D型は、血液・体液による感染で、我が国ではウィルス性肝炎のほとんどがB型とC型肝炎となっています。
ウィルス性肝炎の潜伏期は、3週間から8週間、B型、C型肝炎では6か月の場合もあります。ウィルス性肝炎が発症すると、急性症状の前駆症状として、発熱、咽頭痛、頭痛などの感冒様症状(カゼ症状)が見られた後に、黄疸や褐色尿が見られるようになります。黄疸の出現と同時に、食欲不振、全身倦怠感、嘔気、嘔吐の症状が出現します。
ウィルス性肝炎は、C型肝炎を除いて自然治癒しやすい疾患です。治療は、医療機関への受診と治療に加えて、安静にして体力の維持・回復や食事療法が必要とされています。B型肝炎は、まれに劇症化することがあり生命予後が著しく悪くなるため注意が必要です。C型肝炎は、急性期を経たあとで慢性化して、将来的に肝硬変や肝がんになる可能性があることから、インターフェロンによる治療が必要となります。
A型肝炎とB型肝炎の予防にはワクチンがありますので、A型やB型肝炎流行地への渡航予定者やHBVキャリアーと同居する家族、医療従事者、警察官、消防士などのB型肝炎感染のリスクが高い人や母児感染の可能性がある新生児にはB型肝炎のワクチンを接種する必要があります。
介護ケアの提供で、肝炎ウィルスが感染する可能性は、ウィルス性肝炎に罹患している利用者の血液や体液が皮膚の傷から侵入して感染したり、糖尿病の自己注射などの針刺しによる感染などが考えられます。基本的には、感染者の体液や血液に接触することが無ければ、感染の可能性はありませんので、スタンダード・プリコーションの徹底を図る必要があると考えられます。
<図1>(出典:ホームヘルパーのための感染症ハンドブック/茨城県感染症情報センター)