食事介助は、利用者が感染症の媒介者となるよりも、介護職員が感染症の媒介者となる可能性が大きい介護ケアです。介護職員が利用者への感染症の媒介者とならないためには、全ての感染対策の基本となる手洗いの、「1ケア1手洗い」、「ケア前後の手洗い」を実践する事が原則となります。
食事介助の前後はもちろんのこと、食事介助中に他の介助を行う事になった場合には、食事介助に戻る前の手洗いは当然の手順となります。
食事介助用のエプロンを使用して、1日1回以上の洗濯が必要とされています。食事介助用のエプロンを着用したまま、食事介助以外の介護ケアを行ってはいけません。食事の介助は、1度に2人以上の介助は好ましくありません。介護職員は、立ったままの介助は行わず、椅子に座って利用者と同じ視線の高さで、利用者の様子を確かめながら食事介助を行う必要があります。
利用者の手洗いも介護職員と同様に、食事の前後に行う必要があります。手洗いが困難な利用者は、使い捨ておしぼりやウェットティッシュなどで手を拭くことで、手指や手の清潔を図ります。利用者が手で直接食べないように注意が必要です。
利用者の食事用エプロンや食器などは清潔なものを使用し、使用後は十分な洗浄と乾燥を行い、清潔な場所に保管しなくてはなりません。利用者が、吸飲みによる水分補給をする場合には、使用する都度、洗浄する必要があります。
食事介助によって感染に注意しなければならない疾患は、O157、ノロウィルス、赤痢、腸チフスなどの感染症やサルモネラ属菌、腸炎ビブリオ菌、黄色ブドウ球菌、ボツリヌス菌、病原性大腸菌などによる食中毒です。
利用者の抵抗力が低下している場合には、介護職員と共生している常在菌や手指の傷や救急絆創膏に棲息する病原性微生物が日和見感染を起こす可能性もありますので、介護職員はスキンケアに心がけるだけでなく、健康の維持を図ることも必要となります。