介護職員が排泄ケアを行う際に扱う利用者の排泄物や血液・体液は、感染症の感染源として非常に高いリスクを持つ可能性があるものとしなければなりません。特に糞便には多くの細菌が含まれており、細菌の塊と言っても過言ではありません。排泄ケアを行う職員が病原性微生物の媒介者とならないためにも、糞便や糞便が付着した衣類や器具などの取り扱いには注意が必要です。
介護職員への感染予防のために、スタンダード・プリコーションの励行が最も求められるものが排泄ケアと言えます。利用者に下痢や嘔吐などの感染症の症状が見られる場合には、スタンダード・プリコーションに加えて、接触感染の予防対策を行う必要があります。
利用者の生活環境に感染源の汚染が拡大する事を防止するために、排泄に使用した尿器やポータブルトイレなどの器具の洗浄・消毒などの衛生管理、使用したオムツの処理、トイレの便器の洗浄、便座やドアノブ、水洗レバーの清拭などを適切な方法で行うことが必要となります。
介護職員は排泄ケアを行う際には、スタンダード・プリコーションに従うと共に、排泄ケアの準備として、使い捨て手袋、マスク、ガウンやエプロン、拭き取るための布やペーパータオル、ビニール袋、次亜塩素酸ナトリウム、専用バケツなどの必要な物品をあらかじめ定められた場所に用意します。
排泄ケアの準備が整いましたら、感染源の汚染が拡大しないために、排泄ケア後の処理・片付けまでの定められた手順を速やかにかつ正確に行います。
施設でのオムツの一斉交換やオムツ交換車の使用は感染拡大のリスクが高くなります。オムツ交換の際には、使い捨て手袋は一ケアごとに取り替えて、手袋を外した際には「一ケア一手洗い」の原則に従い、必要に応じて衛生的手洗いを行います。
<排泄ケアで注意が必要な感染症>
①下痢症状:O157、ノロウィルス、赤痢、腸チフス、サルモネラ属菌など
②腸内常在菌:急性胃腸炎、肺炎、膀胱炎など
③外陰部やおりもの:膣炎、膀胱炎など
介護職員は、排泄ケアでの感染予防と感染拡大の防止に必要な取り組みとして、スタンダード・プリコーションの徹底と、利用者の排泄パターンに応じた個別性の高い介護ケアの提供を実践してゆく必要となります。