インフルエンザウィルスによって引き起こされる疾患がインフルエンザです。インフルエンザウィルスには、抗原のタイプによりA型、B型、C型の3種類があり、A型には144種類もの亜型があることがわかっています。インフルエンザの流行を引き起こすのは、A型とB型のウィルスです。
インフルエンザの流行は、我が国では11月下旬~12月上旬に発生が始まり、翌年の1~3月にピークを迎えて、4~5月に終息するという季節性を示します。インフルエンザの発生は、グローバル化によって流行期以外でも認められるようになって来ており、通年でインフルエンザの感染に注意する必要も生じてきています。
インフルエンザは、感染から1~3日の潜伏期間で発症し、多くは38℃以上の突然の熱発が見られます。熱発とほぼ同時に、頭痛、全身倦怠感、筋肉痛・関節痛などが突然現われ、咳、鼻汁などの上気道炎症状(いわゆるカゼ症状)がこれに続きます。適切な治療と安静が保たれれば、およそ1週間の経過で軽快する疾患です。
インフルエンザの感染は、発症の前日から発症後約7日もしくは解熱後2日間とされており、飛沫感染が主な感染経路ですが、接触感染でも感染が生じます。感染もしくは感染が疑われる利用者への身体介護を行う際には、スタンダード・プリコーションに加え、飛沫感染と接触感染の対策が必要となります。
高齢者や呼吸器、循環器、腎臓に慢性疾患を持つ患者、糖尿病などの代謝疾患、免疫機能が低下している患者では、原疾患の増悪とともに、呼吸器に二次的な細菌感染症を起こしやすくなります。インフルエンザの症状だけで無く、原疾患の憎悪や二次感染症によって重篤な状態に陥る可能性が高い疾患であるため、感染症の対策の原則である「持ち込まない」、「持ち出さない」、「拡げない」が、利用者の感染を予防するためには、重要な取り組みとなります。
インフルエンザの予防には、日常的な習慣としてのうがい手洗いが一番の方策となり、流行期には咳エチケットを守ることが重要になります。介護ケアのサービス・支援の提供では、スタンダード・プリコーションの実践と、感染が疑われる場合には飛沫感染と接触感染の対策を行うことになります。流行期となる前にインフルエンザワクチンの接種も予防策としては効果があるとされていますが、流行するインフルエンザウィルスが必ずしも予防接種のインフルエンザワクチンのウィルス型と一致するとは限らないことも知っておかなくてはなりません。
<参考>
インフルエンザ/国立感染症研究所
http://www.nih.go.jp/niid/ja/kansennohanashi/219-about-flu.html
http://www.nih.go.jp/niid/ja/diseases/a/flu.html
訪問介護における新型インフルエンザの対応/杉並区
http://www2.city.suginami.tokyo.jp/news/detail/8317/H210908_houmonkaigo.pdf