肺炎マイコプラズマ(マイコプラズマ・ニューモニア)という病原性微生物によって引き起こされるのがマイコプラズマ肺炎です。マイコプラズマ肺炎は、肺炎球菌による高齢者に多く見られる肺炎とは異なり、高齢者にも見られますが若年層(幼児から青年)に多く見られる肺炎です。
肺炎マイコプラズマには、成人までに97%が感染していると考えられていますが、一度感染しても免疫が持続することが無いために、くり返し感染する可能性があります。
マイコプラズマ肺炎は、潜伏期間が2~3週間で、発熱、全身倦怠が初発症状として見られます。マイコプラズマ肺炎の三大症状は、①発熱、②全身倦怠、③激しい咳となっています。マイコプラズマ肺炎の特徴となる乾性の咳は、初発症状が見られてから3~5日後に始まり、咳症状が強くなると共に痰が絡むようになり、解熱後も3~4週間にわたって続きます。
マイコプラズマ肺炎の合併症には、嗄声、耳痛、咽頭痛、消化器症状や胸痛が約25%で見られるだけでなく、中耳炎、無菌性髄膜炎、脳炎、肝炎、膵炎、溶血性貧血、心筋炎、関節炎、ギラン・バレー症候群、スティーブンス・ジョンソン症候群などの発症や肺の一部に無気肺が生じることがあります。
マイコプラズマ肺炎の治療は、抗菌剤(抗生物質、抗生剤)を服薬することになります。肺炎球菌の治療薬では効果が無く、医療機関への受診と診断によって適切な治療を受けることが必要です。
マイコプラズマ肺炎は飛沫感染と接触感染によって感染が生じます。マイコプラズマ肺炎の予防には、肺炎マイコプラズマのワクチンは無いことから予防接種はありません。日常的な予防方法としては、手洗いやうがいの励行、人ごみはできるだけ避ける、咳エチケットを守ることになります。
マイコプラズマ肺炎の流行は、一年中と考えられていますが、晩秋から早春にかけて多く報告されています。以前、我が国では夏のオリンピック開催の年に流行するために、「オリンピック病」と言われていましたが、1984年、1988年に流行した後に大きな流行は見られなくなっています。
マイコプラズマ肺炎への対応は、スタンダード・プリコーションに加えて、感染の危険性がある場合には、飛沫感染の対策を行い、濃厚接触の可能性がある場合には、接触感染の対策も必要と考えられます。入所系サービスの場合には、咳をしている人との面会は避けるか、サージカルマスクの着用と咳エチケットを守る事が必要となります。