レジオネラ症は、レジオネラ属菌という細菌が感染源となる空気感染、飛沫感染によってヒトに感染する感染症ですが、ヒト-ヒト感染は起こりません。レジオネラ症には、抗菌剤による適切な治療が行われないと高い致死率を示す劇症型のレジオネラ肺炎と、発病率は高くとも自然治癒する一過性のポンティアック熱の二種類に分類されています。
レジオネラ属菌は、自然界の土壌や淡水に棲息している細菌です。レジオネラ症は、循環式浴槽、シャワー、ジャグジー、加湿器、ビル屋上に建つ冷却塔、洗車、噴水などのエアゾルを発生させる人工環境で、レジオネラ属菌がアメーバを宿主として繁殖し、人工環境から放出されるエアゾルを、ヒトが吸い込むことによって感染することが原因となっています。
レジオネラ肺炎は、潜伏期間が2~10日で、全身性倦怠感、頭痛、筋肉痛、食欲不振などの症状に始まり、乾いた咳から2~3日後には、膿性~赤褐色の比較的粘調性に乏しい痰の喀出、38℃以上の高熱、悪寒、胸痛、呼吸困難が見られるようになります。傾眠、昏睡、幻覚、四肢の振せんなどの中枢神経系の症状や腹痛、下痢が見られることも特徴となっています。
ポンティアック熱は、潜伏期間が1~2日で、発熱を症状とし、全身倦怠感、悪寒、頭痛、筋肉痛を伴いますが、肺炎症状はみられずに2~5日程度で自然治癒します。
レジオネラ肺炎の発病リスクが高いのは、高齢者、糖尿病、慢性呼吸器疾患、悪性腫瘍、血液疾患、喫煙者、大量飲酒者、免疫抑制剤使用、臓器移植後、自己免疫疾患など細胞性免疫の感染防御機能が低下した人になります。
レジオネラ症の予防は、レジオネラ属菌が増殖しないように、エアゾルを発生させる水温をレジオネラ属菌が好む20~45℃の範囲の温度から外したり、適切な殺菌剤で処理を行う事など、施設・設備の点検・清掃・消毒を徹底することが必要となります。
家庭では24時間風呂などお湯の入れ替えが毎日では無い場合には、お湯の入れ替えと浴槽の清掃を行う事が必要となります。浴槽水のシャワー利用やエアゾルを発生させる器具の使用も避けなくてはなりません。
加湿器の水を溜めておくタンクの水に、レジオネラ属菌の繁殖が生じる可能性があります。タンクの水は定期的に取り替えて、水は水道水などの衛生的な水を使用しなくてはなりません。加湿器のノズルやタンクの洗浄を定期的に行い、加湿器を使用しない期間は水を抜いて、タンクは空にして清潔にしておく必要があります。