介護ケアのサービス・支援を提供するに当たって感染症対策は必要ですが、日常生活の中で感染症に対して過剰な予防対策は、体外から侵入して感染を引き起こす病原性微生物だけでなく、ヒトと共生している微生物である常在菌まで排除することになります。
常在菌は、ヒトの身体に日常的に生息し共生している細菌のことで、ヒトの身体のうち外界と直接・間接に接触しているあらゆる場所に棲息しています。常在菌には、病原性微生物となり得る細菌もありますが、本来の棲息場所(棲み家)に定着している限り、また、ヒト(宿主)が健康である限りは、感染症の原因となることは殆どありません。
常在菌のうち病原性微生物となり得る細菌は、身体の抵抗力が低下して常在菌のバランスが崩れて繁殖を始めてしまったり、本来の棲息場所以外に移って繁殖が可能であったりした場合には感染症を発症する事になります。
常在菌を排除することは、ヒトの身体の外から侵入した病原性微生物に、常在菌が定着を妨害することが出来なくなり、病原性微生物が容易に定着して繁殖を始めてしまい、感染症発症の可能性を促すことになります。
ヒトは、無菌状態で生活することは殆ど不可能ですが、体力の維持と抵抗力の保持によって、常在菌のバランスを安定させ共生をはかる事は、過剰な清潔行為よりも感染症予防になると考えられます。
常在菌との共生が健康を保つための方策ということを知り、過剰な清潔行為は不健康の元となることを知っておかなければなりません。
<ヒトの主な常在菌>
皮膚:表皮ブドウ球菌、アクネ菌、マラセチア菌、黄色ブドウ球菌など
口:ミュータンス菌、カンジダ菌など
気道:肺炎球菌、肺炎桿菌、インフルエンザ桿菌、黄色ブドウ球菌、連鎖球菌、緑膿菌など
腸:乳酸菌(ビフィズス菌、アシドフィルス菌、フェカリス菌など)、大腸菌、ウェルシュ菌、腸球菌など
尿路:大腸菌、腸球菌、緑膿菌など
膣(女性):デーデルライン桿菌(乳酸桿菌)、カンジダ菌、ビフィズス菌など
※ヒトによって常在菌が棲み着いている種類は異なります。