介護ケアの利用者となる高齢者は、加齢による生理的・病的老化により感染症への罹患のリスクだけでなく、この国の衛生状態が劣悪だった時代を生きてこられたことから、いろいろな感染症の既往歴がある事が考えられます。介護ケアのサービス・支援に当たって利用者の感染症を含む病歴・治療歴の確認は、利用者が主体となる介護ケアと介護ケア提供者の安全を図るためには必要な事であります。
介護ケアの利用者に感染症の既往があったり、慢性感染症に罹っていたとしても、入院治療が必要な状態で無ければ介護ケアのサービス・支援の提供を拒否する理由には出来ません。感染症の既往歴・治療歴を確認する際には、プライバシー、人権の尊重について配慮しなくてはなりません。
介護ケアの利用者への感染症予防には、利用者の抵抗力や体力の維持や改善が、介護ケアの環境への衛生状態の維持・管理や感染症の流行、感染症流行の予測への対応と共に必要な取り組みとなります。
高齢者は、加齢による生理的老化により心身機能の低下が見られることから、発熱や炎症反応などの生体防御反応が弱くなっています。感染症の発病だけでなく疾病による発熱や炎症反応などが弱くなっているために、病状が軽度と見られていても重篤となっている場合があります。利用者の感染症予防対策の基本として、日常の心身の状態を介護職員が良く知っておくことが必要となります。
<利用者の全身状態の観察リスト>
(出典:ホームヘルパーのための感染症ハンドブック/茨城県感染症情報センター ※番号付加)
①応答はいつもと変わりないか
②息苦しい様子はないか
③睡眠はじゅうぶん取れているか
④食欲はあるか、食事・水分はじゅうぶん取れているか
⑤熱はいつもより高い、または低くないか
⑥咳や痰はないか
⑦下痢や便秘はないか
⑧皮膚に異常(発赤、むくみ、腫れ、褥瘡、乾燥など)はないか
⑨目の充血、涙や目やにはないか
⑩鼻水・鼻づまり、くしゃみはないか
⑪耳だれ、耳の痛みはないか、聞こえづらくはないか
⑫口内炎や歯ぐきの異常(出血など)はないか
介護職員は、介護ケアのサービス・支援を提供する際に、利用者の心身の状態を知ることで、利用者の健康管理を行います。利用者の健康の維持・改善だけでなく、利用者の異変を察知して、感染症を始めとした疾病などへの対応を速やかに行うことが求められます。