感染症とは、病原性微生物(感染の原因となる原虫,真菌,細菌,リケッチア,ウイルスなど)がヒトの体内に侵入して引き起こす疾病の事を言います。病原性微生物は全てが強い病原性を持っている訳では無く、多くの場合は病原性微生物が体内に侵入したとしても、ヒトの抵抗力によって病原性微生物を死滅させたり、体外に排除されるために感染・発病することはありません。
ヒトの体内に感染症の病原性微生物が侵入しても、多くの場合は感染・発病することはありませんが、感染症によっては、症状が見られずに健康な状態と変わらない不顕性感染(無症状感染)という感染の状態が起きる場合があります。不顕性感染となったヒトは、保菌者となって他のヒトへ疾患を感染させる可能性を持つ事になり十分な注意が必要です。しかし、無症状のために治療や対策を立てることが難しく、不顕性感染のおそれがある感染症が周囲で起きた場合には、予防対策を充分に行う事が必要となります。
感染症のリスクは、介護事故と同様に介護ケアの利用者、提供者、環境が存在することで、病原性微生物がハザードからそれぞれが持つリスクとなります。
介護ケアの利用者が持つ感染症のリスクは、高齢者の加齢による生理的老化により、抵抗力、体力の低下が見られることで、感染症に感染しやすくなっているだけでなく、病的老化や生活不活発病などにより感染症の感染の可能性だけでなく、感染症が発病することで重篤化する危険性が大きくなることが問題となります。
介護ケアの提供者が持つ感染症のリスクは、介護ケアの提供者である介護職員の体内に侵入したとしても、抵抗力によって多くの場合は感染症の発病には至らないと考えられ、介護職員が感染症を発病するリスクは低いと考えられます。介護ケアの提供者が利用者へ感染症を感染させるリスクは、介護職員が感染している場合だけでなく、病原性微生物のヒトへの感染経路は、①空気感染、②飛沫感染、③接触感染などがあり、介護職員の手指や衣類、所持品が病原性性微生物に汚染されていれば、介護職員が感染していなくとも利用者への感染のリスクが生じることになります。
感染症への注意は流行の有無にかかわらず、①うがい、②手洗い、③清掃といった行為を、日常的に心がけて習慣づけることが感染症のリスクを少なくすることが基本的な対策となります。
<図1>病原性微生物のヒトへの感染
(出典:ホームヘルパーのための感染症ハンドブック/茨城県感染症情報センター)