訪問介護サービスで訪問介護員が行う介護ケアは、身体介護と家事援助があります。身体介護は、利用者との接触が常に見られることから、感染症の利用者からの感染、利用者への感染のリスクが常にあることは容易に理解出来ます。家事援助の洗濯の場合は、病原性微生物に汚染された衣類やシーツなどを扱う可能性がある事から、スタンダード・プリコーションの励行は、洗濯の家事援助サービスを提供するには欠かせないものとなります。
洗濯の家事援助を提供する上で、注意が必要な主な感染症。
(1)衣類、シーツ、風呂マット、タオルなど:疥癬、シラミ、白癬(水虫)
(2)衣類、シーツの汚れ
①排泄物・吐物:O157、ノロウイルス、赤痢、腸チフスなど
②血液:B型・C型肝炎、HIV感染症など
③痰:結核、MRSAなど
(3)褥瘡、傷の浸出液:MRSA、緑膿菌感染症など
洗濯の家事援助を提供する上で、利用者に感染症が疑われる場合や感染症の発症が確認された場合には、スタンダード・プリコーションに加えてそれぞれの感染症に応じた感染経路別対策や消毒などの対策が必要な場合があります。
汚れた衣類やシーツは、ダニやシラミが棲息している場合があるので、抱きかかえずに持ち運び、飛散しないように取り扱う。
疥癬・シラミ症に利用者が罹患している場合は、衣類やシーツをバケツなどに入れて、50℃以上、10分間以上の温湯消毒を行ってから通常の洗濯を行う。
血液、体液、排泄物等が付着しているとき、利用者がO157などの消化器系の感染症に罹患しているときや流行性結膜炎に罹患しているときには、80℃、10分間の熱湯消毒または次亜塩素酸ナトリウム駅による消毒が必要となります。
病原性微生物の多くは乾燥に弱いことから、洗濯物は完全に乾燥させる事が必要で、出来れば日光での乾燥が望ましいとされています。洗濯などを行う事で濡れたり湿気を帯びた場所は、カビなどの発生を防ぐ意味もあり、良く水分を拭き取って乾燥させる必要があります。
介護職員は、「一ケア、一手洗い」の原則を守り、スタンダード・プリコーションと感染経路別の予防対策などを行うことで、「持ち込まない」、「持ち出さない」、「拡げない」の実践を行われる事が求められます。