老化によって睡眠にもヒトにとって好ましくない変化が現れます
加齢に伴い老化が見られるようになると、入眠後の覚醒回数の増加、就床時間に対する睡眠時間の減少、ノンレム睡眠の減少、入眠してから最初のレム睡眠になるまでの時間が減少、ノンレム睡眠が浅い段階に止まったり、レム睡眠の回数が減少するという睡眠の内容が変化してしまい、睡眠にも老化と言って良い負の現象が見られるようになります。
生物時計の中枢は視床下部の視交叉上核にあって、10個前後の時計遺伝子の相互作用で構成されていて、睡眠の老化はこの生物時計の中枢である視床下部の視交叉上核が加齢と共に変性して、睡眠覚醒リズム、メラトニンの分泌リズム、深部体温の変化リズムなどをコントロールしている時計遺伝子の発現が低下する事によって生じます。そして、時計遺伝子の発現の低下がすることにより前記のような睡眠のヒトにとって好ましくない変化が見られる原因の一つになります。
老化は生活全体のリズムにも影響を及ぼし睡眠に悪い影響を与えます
睡眠は老化によって生活のメリハリが乏しくなったり、運動量の低下、日中の外出機会の減少などのために疲労度が少なくなり短く浅くなります。また太陽光への曝露の機会が減る事にもなります。この活動性の老化という外因的な影響は、睡眠覚醒リズムが乱れたり、メラトニンの分泌の低下などが生じるという夜間の睡眠が阻害される原因となります。夜間の睡眠の阻害が生じることにより、日中の自由な時間があるために昼寝をしてさらに夜間の睡眠が阻害されるという悪循環が生じてしまいます。
アルツハイマー病は、視交叉上核の病的な変性が著しく生じて生体リズムの混乱を引き起こします。さらにアルツハイマー病のために行動、活動に支障を来して室内での生活となり、太陽光への曝露の機会の減少や生活のメリハリが乏しくなります。結果として睡眠にとって好ましくない内因性、外因性による著しい夜間の睡眠の阻害が生じ、睡眠の問題を含む日常生活全般の問題がしばしば生じます。
老化に伴い睡眠が阻害された状態を改善するには生活改善が必要です
眠れない、眠りが足りない、睡眠中断、早朝覚醒があるなどの夜間に睡眠が阻害される原因にはいろいろなものがありますが、特別な疾病や障がいが見られなかったり、睡眠に影響する薬の処方は受けていない場合には、活動性の老化が原因となっている事が考えられます。
良く眠るための基本は①朝日を浴びる、②昼の間に光を浴びて活動する、③夜は部屋を暗くして就寝する、④規則的な食事をするという年齢に関係なく睡眠に大切な4つの項目に加えて、「眠気が無いのに早くから就寝しない」という事が夜間の睡眠を阻害しないための生活改善方法であり、望ましい生活習慣となります。