高齢者では、飲酒後のアルコール濃度が低下する割合は、若年者とは大きく変わらないとされていますが、血中のアルコール濃度は、同じ飲酒量でも若年者に比べると、高齢者では高くなることがわかっています。さらに、アルコールに対する耐性が出来にくいことや酔いの度合いが若年者に比べると強くなることがわかっており、高齢者は加齢に伴う老化によって≪酒に弱くなる≫ことを知っておかなくてはなりません。
高齢者の血中のアルコール濃度が高くなる原因には、水に溶けやすく、脂肪に溶けにくい性質を持つアルコールの濃度が、加齢に伴う生理的老化によって体脂肪率が増加するために、体内の水分の割合が減少することによると考えられています。
また、加齢に伴う生理的老化によって、胃の粘膜に存在するアルコール脱水素酵素というアルコールを分解する酵素が失われることで、胃でアルコールが分解される能力が低下することも、高齢者の血中のアルコール濃度が高くなる原因と考えられています。
アルコールを多量に飲酒する人には、認知機能の低下や認知症が見られることは知られており、アルコールが関連する認知症の原因には、脳血管障害、頭部外傷、肝硬変、糖尿病、ウェルニッケ-コルサコフ症候群など様々な疾病があることがわかっています。
アルコールの問題には、アルコールの多飲が認知症の原因になるだけではなく、アルコール性認知症以外の認知症患者が飲酒のコントロールを失うことで、アルコール依存症のように考えられたり、飲酒に関連する問題だけで無く、様々な日常生活上での問題が引き起こされることがあります。
アルコール性認知症とは、アルコール以外に認知症の原因が無いものを言います。アルコール性認知症は、≪可逆的な認知症(reversible dementia)≫であることから、断酒と生活環境や生活習慣の調整・改善によって回復する可能性があるとされています。
認知症は、過去においては「不可逆的に進行する」という考え方でしたが、現在では不可逆的な認知症(irreversible dementia)だけでなく、治療可能な認知症(treatable dementia)や可逆的な認知症(reversible dementia)もあると考えられています。
アルコールに関連する認知症の問題については、どのようなタイプの認知症によって引き起こされているかによって、治療や対応などが大きく異なることにから、認知機能の障害や認知症の原因を知ることが重要であると考えられます。
702211