認知症の認知機能障害やBPSDに対して薬物療法が行われています。認知症の予防や進行を止めたりする薬剤はまだありませんが、コリンエステラーゼ阻害剤(ChEI)は、認知機能障害の進行を遅らせることに有効とされています。
BPSDの薬物療法については、≪BPSDに対応する向精神薬使用ガイドライン≫に、「BPSDに対する薬物療法の進め方」が示されています。
1.BPSDと薬物治療について
●BPSDには認知症者に見られる言動・行動のすべてが含まれる。
●BPSDの発現には身体的およびあるいは環境要因が関与することもあり、対応の第一選択は非薬物的介入が原則である。
●BPSDの治療では向精神薬の使用は適応外使用になる。基本的には使用しないという姿勢が必要。
●向精神薬、特に抗精神病薬については処方に際し十分な説明を行い同意を本人およびあるいは代諾者より得るようにする。
2.薬物療法を検討するための条件
①身体的原因がない。
②他の薬物の作用と関係がない。
③環境要因により生じたものではない。
④非薬物的介入による効果が期待できないか、もしくは非薬物的介入が適切ではない。
3.BPSDに対する点検
1)その症状/行動を薬物で治療することは妥当か、それはなぜか。
2)その症状/行動は薬物療法による効果を期待できるか。
3)その症状/行動にはどの種類の薬物が最も適しているか。
4)予測される副作用はなにか。
5)治療はどのくらいの期間続けるべきか。
6)服薬管理は誰がどのように行うのか。
4.BPSDの治療薬剤
▼幻覚・妄想・攻撃性・焦燥
⇒メマンチン、コリン分解酵素阻害薬を使用し、改善しない場合抗精神病薬の使用を検討する。DLBではコリン分解酵素阻害薬が第一選択となる。
▼抑うつ症状・うつ病
⇒コリン分解酵素阻害薬を用い、改善しない場合抗うつ薬の使用を検討
▼不安・緊張・易刺激性
⇒抗不安薬の使用を検討
▼入眠障害・中途/早朝覚醒
⇒病態に応じて睡眠導入薬/抗精神病薬/抗うつ薬の使用を検討
5.BPSDの薬物治療の留意点
◆低容量で開始し症状をみながら漸増する
<用量について>
●添付文書上の最高用量を超えないこと
●薬物相互作用に注意すること
●用量の設定では、年齢、体重、肝・腎機能などの身体状況を勘案すること
6.薬物療法開始前後の状態のチェックポイント
○日中の過ごし方の変化の有無
○夜間の睡眠状態(就床時間、起床時間、夜間の排尿回数など)の変化
○服薬状況(介護者/家族がどの程度服薬をかくにんしているかなど)の確認
○特に制限を必要としない限り水分の摂取状況(食事で摂れる水分量を含めて体重(kg)×(30~35)/日mlが標準)
○食事の摂取状況
○パーキンソン症状の有無(寡動、前傾姿勢、小刻み/すり足歩行、振戦、仮面様顔貌、筋強剛など)
○転倒しやすくなったか
○減量・中止できないか検討する。減量は漸減を基本とする。
○昼間の覚醒度や眠気の程度
出典:-かかりつけ医のための-BPSDに対応する向精神薬ガイドライン(http://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/2r98520000036k0c-att/2r98520000036k1t.pdf)
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