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-ビタミンB1欠乏症-治療可能な認知症でありながらも時期を失してしまうと後遺症のコルサコフ症候群に至るビタミンB1欠乏症

ビタミンは、食事によって摂取されて、ヒトの身体の機能を正常に保つためには、必要量は微量ながらも必須の栄養素(補酵素)であります。ビタミンには、水溶性のものが9種類、脂溶性のものが4種類あり、ビタミンB1、ビタミンB12、葉酸などが認知症の原因や危険因子になるとされています。

ビタミンB1(チアミン)は、水溶性ビタミンであり、食物中に幅広く含まれており、炭水化物や脂質、アミノ酸、ブドウ糖、アルコールなどのエネルギー代謝に関与しています。体内ではチアミンピロリン酸として貯蔵されており、骨格筋、心臓、肝臓、脳、腎臓などに蓄えられています。

ビタミンB1は、健常な場合には体内に約20~30mgが貯蔵されており、成人では約1mg/日を代謝するため、摂取を中止してからビタミンB1欠乏症となるまでには、数週間から数ヶ月かかると言われています。

ビタミンB1は、過剰に摂取しても排泄されることから、過剰症が発生することは無いと考えられていますが、成人が3,000mg/日以上の慢性的な服用を2週間以上続けた場合に、頭痛、いらだち、不眠、脆弱化、接触性皮膚炎などの症状が発現し、服用を中止すると数日で症状は消失したとされています。

ビタミンB1欠乏の原因には、妊娠、授乳、甲状腺機能亢進症(バセドウ病)によるビタミンB1必要量の増加、偏食、悪阻などの食物摂取量の減少などがあります。また、アルコールの多飲では、アルコールを分解するためにビタミンB1の消費量が増加し、さらに、食事の質の低下や消化管からのビタミンB1の吸収が低下することから、ビタミンB1の欠乏状態に陥りやすくなります。

アルコールの多飲だけでなく、胃全摘、腸管術後にビタミンB1の吸収が低下する場合があります。また、ビタミンB1を含まない高カロリー輸液を長期に行っている場合にも、ビタミンB1欠乏症の可能性があり注意が必要とされています。

ビタミンB1欠乏症は、わが国では脚気が過去に多く見られ、死者も沢山出るという疾病でしたが、現代ではほとんど見られなくなりました。しかし、糖質を多く含む清涼飲料水やインスタント食品などを中心とした食生活を過ごしている人々の間で、脚気予備軍が増えていると言われています。

脚気以外のビタミンB1欠乏症には、脚気心、ビタミンB1欠乏性ニューロパチー、ウェルニッケ-コルサコフ症候群(Wernicke-Korsakoff症候群:WKS)が知られています。

ウェルニッケ-コルサコフ症候群は、ビタミンB1欠乏によって起こる急性ないし亜急性脳症であるウェルニッケ脳症と、ウェルニッケ脳症の慢性期(後遺症)であるコルサコフ症候群を合わせたものであります。WKSは、アルコール依存症の重篤な合併疾患として知られていますが、エイズ、悪阻、がん治療における化学療法も原因となると言われています。

ウェルニッケ脳症の症状は、①意識障害、②眼球運動障害、③失調性歩行が特徴となります。ウェルニッケ脳症が発症した場合には、ビタミンB1を大量投与することで、救命と後遺障害の発症を防ぐことになります。

ウェルニッケ脳症の慢性期(後遺症)に移行すると、①前向性健忘、②逆行性健忘、③見当識障害、④作話、⑤病識の欠如などの認知症の症状を特徴とするコルサコフ症候群に至ります。アルコール依存症に多いことから、アルコール依存症患者に発症したコルサコフ症候群は、代表的なアルコール認知症と言われています。

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