認知症の歴史は、認知症(痴呆)とは「あらゆる精神機能の荒廃した状態を示すもの」として用いられて来た用語でした。現代の認知症は、歴史的には「器質性認知症」として認知症(痴呆)の中で分類されていたものであります。
1822年に進行麻痺(梅毒スピロヘータによる進行性の認知症)が器質性認知症(痴呆)とされてから、19世紀の後半までは、器質性認知症というと、「進行麻痺」と「老年痴呆」との2つに分類されていました。
1891年にフランスの医師M.Klippelが、「進行麻痺」を3群に分類し、その中の一つが≪血管性認知症≫となりました。また、1894年にイエーナ大学のO.Binswanger教授が、進行麻痺と区別できる症例を抽出して2型にわけ、その一つが後に<ビンスワンガー病>として注目を浴びるものとなりました。
1892年にプラハ大学のA.Pick教授によって、「老年痴呆」の中に血管障害によらない限局性の脳委縮が見られる特殊な症例が報告され、1926年にピック病と称されるようになりました。アルツハイマー病は、1906年にミュンヘン大学のAlzheimer博士が症例報告をしたのが始まりで、1911年にKrepelinによってアルツハイマー病と命名されました。
レビ-小体認知症は、1976年に小阪憲司博士が発見して、1995年のイギリスで行われた第一回国際ワークショップで命名されました。
認知症という用語は、[痴呆]という言葉が、侮蔑的、差別的な用語であり、認知症の患者や介護を行う家族に対して偏見を抱かせる危惧・懸念があると考えられていました。2004年4月に高齢者痴呆介護研究・研修大府センター長(愛知県)などから、[痴呆]呼称変更についての要望書が提出され、厚生労働省が用語を変更するための検討会を立ち上げ、2004年12月に[痴呆]を【認知症】と変更する事が決定されました。そして、2005年1月より、【認知症】の用語を[痴呆]に替えて用いるように行政指導が行われることになり、現在では【認知症】の用語が一般的になりました。(参考:http://www.mhlw.go.jp/shingi/2004/12/s1224-17.html)
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