不定愁訴とは、身体のどこが悪いのかがハッキリしない訴えであったり、自律神経失調症や器官神経症(内蔵神経症)などのように訴えが漠然としており、検査をしてもどこが悪いのか、裏付ける身体的な疾病がハッキリしないものを指します。
≪不定愁訴の特徴≫
①訴えが主観的、他覚的・客観的所見に乏しい
②訴えは強い
③多彩
④質的・量的に変化しやすい
不定愁訴の症状としては、全身倦怠感、めまい、頭重、頭痛、動悸、耳鳴り、痺れ感、動悸、微熱感、のぼせ、四肢冷感、下痢などの自立神経系の関与が強く考えられる身体的愁訴であります。愁訴とは、寒け、冷え、のぼせ、めまい、頭痛、耳鳴りなど、ハッキリと自覚できる症状を訴えることを言います。
≪不定愁訴の身体症状≫
◆全身的:全身倦怠感、易疲労感、ふらつき感、めまい感、熱感、睡眠障害、性欲障害
◆神経筋骨格系:頭痛、頭重、肩こり、背腰痛、しびれ感、振戦、セネストパチー
◆心・循環系:のぼせ、動悸、胸痛、苦悶感、四肢熱感・冷感
◆呼吸器系:呼吸促迫、息切れ、息苦しさ、喉頭閉塞・異物感、咳
◆消化器系:食欲不振、かわき、悪心嘔吐、胃部不快、腹痛、膨満、便秘、下痢
◆皮膚泌尿器系:発汗、寝汗、かゆみ、乾燥、頻尿、排尿困難
◆生殖器系:インポテンツ、月経障害
◆その他:眼精疲労、耳なり精神症状:不安、緊張、焦燥、抑鬱、心気、集中困難、意欲低下、記銘力低下
≪不定愁訴を呈しやすい疾患≫
●不安神経症
●身体化障害: 身体的異常(-)、身体症状(++)、例:転換性障害、若年発症、慢性化
●起立性低血圧:めまい、立ちくらみ、動悸が主体,薬剤性に注意、起立試験立位負荷
●仮面うつ病:早朝覚醒、食欲不振,抑うつ気分、抗うつ薬有効
●本態性自律神経失調症
●精神科疾患
不定愁訴の対応については、兵庫県保険医協会の「一般内科における不定愁訴」にある≪不定愁訴へのアプローチ≫がとても参考になります。
≪不定愁訴へのアプローチ≫
①「やまいの歴史」を傾聴する
⇒患者の受診に至るまでの物語(経過)を一度は最後まで聴いて、患者の「やまいの歴史」を知る
⇒不定愁訴から抜け出す鍵を握っているのは、医療職者ではなく患者自身である。将来的に患者の「気づき」を促すには、「この先生の話なら聞いてみよう」という信頼関係が存在していることが前提となる
②アースする
⇒患者のフラストレーションを、医療職者が担うのは、アースのように外に逃がす役割である
⇒医療職者もフラストレーションをため込まないことが必要となる
③「とらわれ」をはずす
⇒「痛い→出来ない→よけい痛くなる」という悪循環を、「痛い→普段通りにする→生活に支障を来さない→痛みが気にならない→痛みが弱くなる→もっと出来る」という好循環に転換する
⇒症状の原因については「棚上げ」して、症状の改善を目指す。「棚上げ」については、器質疾患は心配しなくても大丈夫と言い切れるだけの評価が終了していることが前提となる
④心身相関への気づきを促す
⇒患者の頭の中に、「症状がある=器質的原因がある」ではない、「心理的要因⇒症状悪化」という思考回路への転換を促す
⇒あくまで患者自身が気づき、心からそう思えるように支援するスタンスで接する
⑤適切な距離を保つ
⇒不定愁訴の患者に対しては、つかず離れずの適切な距離を保つことが重要となる
患者からは、症状が改善しないことに不満を訴えられたり、繰り返し検査することを要求されたりすることがある。何度も救急外来にかかったり、電話をかけてきたりすることもあるが、経過が安定してきたらこちらで治療の枠組みを決め(例:月1回、15分)、その範囲内で診療するように患者と話し合っていくべきである。
参考:一般内科における不定愁訴/兵庫県保険医協会
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