平成23年国民健康・栄養調査(横断的調査)によると、60歳代の肥満【BMI>25】の男性は31.5%、女性は24.4%、70歳以上の男性は26.2%、女性は26.4%となっています。60歳代と70歳以上との間では、男性の肥満の割合が大きく減少しています。肥満の割合は、男性では40歳代の34.8%を頂点にして、加齢に伴って減少していますが、女性は加齢に伴って増加しています。
《JACC Study・日本の高齢者における肥満度と総死亡との関連 玉腰暁子(http://www.aichi-med-u.ac.jp/jacc/reports/tamaa6/index.html)》によりますと、65歳以上の高齢者で【20≦BMI<30】の場合には男性、女性ともに死亡リスクが低い1倍以下となっており、男性では【BMI≧30】でも1倍以下、女性では、1.24倍という結果が出ています。
若年者であれば、【25≦BMI】となった場合には肥満とされて、生活習慣病の予防や改善のために【BMI<25】を目指さなければなりませんが、高齢者の場合には、生活習慣病などの疾病がある場合には、疾病の治療を行う事はもちろんのことではありますが、必ずしも【BMI<25】とするための取り組みが必要とは言えないのではないかと考えられます。
《JACC Study》では、高齢者の肥満による総死亡リスク上昇が見られなかった理由は不明としながらも、「肥満による悪影響を強く受けた方々が高齢期に達する前に亡くなってしまったかもしれないこと、高齢期には体重が多いことによる良い影響(たとえば栄養貯蔵)の方が悪い影響より強い可能性、また高齢者では正常体重者でもメタボリックな危険因子を持つ割合が高いこと(そのため見かけ上、過体重者のリスクが小さくなること)などが考えられる」とされています。
ヒトの身体の身体組成は、加齢に伴って変化して行き、25歳では身体組成の50%近くが筋肉であったものが、75歳になると25%程度まで減少してしまいます。筋肉量の減少は、脂肪量の増加となって、25歳では脂肪が20%程度であったものが、75歳になるとおよそ40%程度にまで増えることになります。
高齢者は、肥満による死亡リスクは減少すると考えられますが、肥満にはフレイルティ(虚弱)やサルコペニアとの関連がある可能性が指摘されており、健康寿命(余命)が短くなる可能性があることが考えられます。
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