貧血には、①ヘモグロビンの合成が出来ない状態、②赤血球の数が減少した状態の2つがあります。さらに、赤血球数の低下には、赤血球の産生が出来ない状態、DNA合成が出来ない状態、赤血球が破壊された状態と出血が含まれます。立ちくらみなどは、貧血とはされません。
WHOによる貧血の定義は、年齢を問わずヘモグロビン(Hb)濃度により、男性13g/dl未満、女性12g/dl未満とされています。加齢に伴って生理的老化によって、骨髄での赤血球の合成が低下し、若年者に比べると貧血となります。我が国では、男女を問わずHb11g/dl未満を「貧血を有する高齢者」とすると考えられています。
貧血となって血液中のヘモグロビン(Hb)濃度が低下すると、身体器官・組織に酸素の供給を十分に行うことが出来なくなり、めまい、息切れ、易疲労性などの症状が出現します。脳への酸素供給も減少することから、頭痛も出やすくなります。
≪貧血の症状≫
①酸素不足による症状:頭痛、めまい、倦怠感、狭心症、筋肉のこわばり、など
②赤血球量の減少による症状:顔面蒼白、浮腫、ふらつき、など
③代償機序による症状:動悸、息切れ、など
高齢者は、日常生活での活動が低下しているために、Hb減少による動悸や息切れなどの、典型的な症状を自覚することが少ないと考えられます。貧血の程度と症状の強さは、必ずしも一致するとは限らず、慢性の経過で出現した場合には、Hb9g/dl以下でも自覚症状が見られないことがある一方で、急性に貧血が進行した場合には、軽い貧血でも動けなくなる場合があります。
高齢者の貧血症状の特徴は、動脈硬化に基づく脳血管疾患や循環器疾患が背景となり、認知障害などの精神神経症状、狭心症などの循環器症状、食思不振などの消化器症状など、多彩な症状が見られることであります。「なんとなく元気が無い」、「疲れやすい」などの不定愁訴も貧血が原因となっている場合があります。
高齢者貧血で頻度の多い貧血には、①鉄欠乏性貧血、②老人性貧血、③慢性疾患に伴う二次性貧血、④巨赤芽球性貧血、⑤腎性貧血、⑥血液疾患(骨髄異形成症候群、多発性骨髄腫、悪性リンパ腫、等)、⑦慢性肝疾患、⑧甲状腺ホルモン低下、⑨薬剤性造血障害などがあります。
貧血には、様々な原因があることから、貧血だからということで、鉄の不足、食事の問題と考えるのではなく、高齢者の場合には、重い疾病が隠れている場合もあることから、貧血を有すると診断された場合には、原因疾患を確かめることが必要と考えられます。
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