誤嚥とは、飲食物や唾液などが口腔から胃へ向かわずに、喉頭から気管へ入り込んでしまうことであります。加齢に伴う生理的老化によって起こりやすくなるだけでなく、様々な疾病や障害によって、嚥下反射の障害、嚥下機能の低下、食道の通過障害などが引き起されることによって、誤嚥が生じると考えられます。
誤嚥には、嚥下反射が起きる前に、だらだらと気道に食塊が入ってしまう[嚥下前の誤嚥]、嚥下反射時に喉頭閉鎖のタイミングがずれてしまい、液体などが瞬間的に入り込んでしまう[嚥下中の誤嚥]、咽頭部に残留したものが嚥下後に気道に入る[嚥下後の誤嚥]があります。
誤嚥には、本人や家族、介護者など周囲の人が見ていて気がつく【顕性誤嚥】と、本人も周囲も気がつくことが無い、出来ない【不顕性誤嚥】があります。【顕性誤嚥】は、食事中に多く見られ、【不顕性誤嚥】は、就寝中に多く起きているとされています。
気管内に異物が入り込むことで誤嚥が生じると、咳嗽反射というむせたり咳をするといった症状が引き起こされて、気管内に侵入した異物を気道外に排出しようとします。咳嗽反射が弱かったり、生じなかった場合には、異物が気管や気管支、肺に入り込むことになり、誤嚥性肺炎や喘鳴、気道閉塞、窒息などを引き起こす原因となります。
≪誤嚥の原因となる疾患≫
●消化管逆流:胃食道逆流症、食道裂孔ヘルニア、胃切除、円背・亀背、など
●認知症:アルツハイマー病、脳血管性認知症、など
●神経変性疾患:パーキンソン病、脊髄小脳変性症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、など
●医原性:経管栄養(経鼻栄養、胃瘻)、薬剤の副作用、手術(甲状腺、肺、食道、縦隔、心臓など)の際の神経損傷、など
●その他の疾患:心臓及び近傍の大動脈の拡大(大動脈瘤など)、悪性腫瘍(咽頭がん、食道がん)、など
飲食物ではない異物を、誤って飲み込んでしまうことは≪誤飲≫であります。<誤嚥>と混同しやすく、誤った語彙の使い方や理解をしていることがあるとされています。
参考:誤嚥/「病院の言葉」を分かりやすくする提案(http://www.ninjal.ac.jp/byoin/teian/ruikeibetu/teiango/teiango-ruikei-a/goen.html)
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