筋萎縮性側索硬化症(ALS:amyotrophic lateral sclerosis)は、50歳代から発症率が上昇しはじめ、60~70歳代で最も発症率が高く、80歳代では減少傾向となる、原因不明の神経難病であります。
我が国の有病率は、人口10万人当たり7~11人で、発病率は、人口10万人当たり1.1~2.5人となっており、男性が女性に比べて1.2~1.3倍の発症率となっています。全国のALSとして登録されている特定疾患医療受給者数は、約9,000人になっています。
ALSは、アミトロと呼ばれたり、米国ではルーゲーリック病(米国の元大リーガー)、イギリスではMND(motor neuron disease:運動ニューロン病)とも呼ばれています。
ALSの症状は、手足・のど・舌の筋肉や呼吸に必要な筋肉などの萎縮と筋力低下が見られる進行性の疾病であります。ALSの進行に伴って、上肢の機能障害、歩行障害、構音障害、嚥下障害、呼吸障害などが生じますが、通常は感覚や知能の障害は見られず、眼球運動障害や失禁も見られにくいとされています。
ALSの原因は、脳から脊髄を中継点として筋肉(効果器)に向かう、脊髄までの一次(上位)運動ニューロンと脊髄からの二次(下位)運動ニューロンが、選択的にかつ進行性で変性・脱落してゆくために、筋肉の萎縮や筋力低下が引き起こされます。
≪ALSの初発症状≫
①球麻痺型:飲み込みが悪くなる、言葉が話しにくくなるなどの言語障害、嚥下障害が主体として現れる
②上肢型:字が書きにくい、箸がうまく使えない、腕が上げにくいなどの上肢の筋萎縮や筋力低下が主体として現れる
③下肢型:歩きにくい、階段が昇りにくい、スリッパが脱げやすいなどの下肢への二次運動ニューロンの障害が主体として現れる
④呼吸筋麻痺型:手足の筋力低下より呼吸筋麻痺による呼吸困難が先に現れる
ALSは、進行性で症状が軽くなることはありません。最後は、呼吸筋麻痺による呼吸不全で死の転帰を迎えることになります。人工呼吸器装着などの人工的呼吸補助を行わない場合には、発症から死亡までは、およそ2~4年といわれてますが、進行が速い場合には、3~6か月で亡くなったり、人工的呼吸補助を使わなくとも10年以上ゆっくりと進行することもあります。
ALSは、病状の進行に個人差が大きく、構音障害が生じる事からコミュニケーションが困難になって行きますが、その人の尊厳を守りながらもQOLを高めるために、速やかな社会資源(介護保険制度、障害者福祉制度など)の活用や療養生活に対する細かな配慮が求められます。
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