腰部脊柱管狭窄症は、加齢に伴う椎間板の膨隆、黄色靱帯の肥厚、椎間関節の肥厚変性や、変形性脊椎症による椎体の骨棘の生成、腰椎変性すべり症などの生理的・病的老化によって、脊柱管の狭窄が引き起こされます。腰部脊柱管の狭窄によって、脊柱管の中を通る馬尾神経の神経線維や馬尾神経に栄養を供給している血管が圧迫されることによって、下肢のしびれや痛み、間欠跛行などの症状が現れる疾病です。
脊柱管は、脊椎の前方にある円柱状の椎体と椎間板、後方の棘突起と椎弓に囲まれた管状の空間であります。腰部脊柱管には、元は中枢神経の脊髄が通っていましたが、身長の伸展に伴って、脊髄は5つの腰椎のうち第一腰椎まで引き上げられて、腰椎には末梢神経の馬尾神経が通って、腰椎から順次左右一対ずつ枝分かれして、下肢に向かっています。
腰部脊柱管狭窄症には、間欠跛行という特徴的な症状が見られます。腰部脊柱管狭窄症の間欠跛行は、[歩き始めは痛みやしびれは無い]⇒[しばらく歩くと下肢に痛みやしびれなどが現れて歩き続ける事が難しくなったり歩けなくなる]⇒[しばらく前かがみになったり腰掛けて休むと、下肢の痛みやしびれなどが軽減する]⇒[再び歩くことが出来るようになる]という症状であります。
間欠跛行以外にも、しばらくまっすぐに立っているだけで下肢や臀部にしびれや痛みが感じられたり、排尿障害、排便障害、勃起障害(意図しない勃起)などが生じる事があります。病状の進行に伴って、初めは安静時には引き起こされていなかった症状が、安静時にも生じるようになってしまいます。
腰部脊柱管狭窄症の予防には、正しい姿勢を保つこと、腰部に過度の負担をかけるような重い物を無理して持ち上げる、腰を無理にひねることは避けて、長時間同じ姿勢で作業を続けずに腰部を伸ばすなど血行を改善するなどを図ったり、適度な運動を行って腰部の筋力を保つことが必要と考えられます。
腰部脊柱管狭窄症を悪化させないためには、背中を反らすと神経が圧迫されるので、症状が出にくい前屈みで楽な姿勢を取ること、歩行の際には杖やシルバーカーなどを使って姿勢と身体の安定を図ることや、腰部への負担をかけたり、腰部の神経を圧迫しないことが必要となります。喫煙は、血液の循環を悪くすることになり、症状を悪化させることにつながりかねません。
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