呼吸機能は、ヒトが酸素を取り入れて、二酸化炭素を排出するために、肺が呼吸の動作を繰り返すことで、肺胞と血液との間でガス交換をする働きです。
肺は、外気と直接に接しながら、生まれてから死ぬまで、休む事なく呼吸を繰り返しています。安静にしている時には、毎分250mlの酸素が肺胞から血液中に取り込まれて消費され、毎分200mlの二酸化炭素が産生されて体外に排出されます。運動時には、毎分1000mlの酸素が消費され、毎分800mlの二酸化炭素が産生されます。酸素消費量と二酸化炭素産生量の比率は、安静時でも運動時でも一定となっていて、およそ0.8です。
呼吸機能は、外気と直接に接しているために、細菌やウィルスへの感染、タバコやディーゼル排気、PM2.5、アスベストなどの粉じんの吸入などの外的な病的因子による病的老化だけでなく、老化が生じる以前に病的な変化が生じている可能性が否定できません。そのために、病的な変化や病的老化が見られない、肺の存在を確認することが出来ないことから、呼吸機能の加齢による生理的老化を確認する事は不可能と考えられています。
呼吸機能の加齢に伴う変化は、肺の弾性収縮力の低下(1秒呼気量の低下)、胸壁のコンプライアンスの増加(肺活量の低下)、横隔膜の筋力低下が見られます。また、加齢によって動脈血酸素分圧は低下が見られます。若年健康者でほぼ100mmHg、老年健康者で約80mmHgとなっています。
呼吸機能は動脈血二酸化炭素分圧(PaCO2=40mmHg)で呼吸量を調節しています。PaCO2が2mmHG上昇すると換気は毎分4リットル増加します。血中の動脈血酸素分圧(PaO2)が60mmHg程度まで減少しなければ呼吸は刺激されません。
肺気量(肺の容量)は、健常肺と加齢肺とを比べると、残気量が増加しますが、肺活量のうち予備吸気量が減少するため、全肺気量(最大に膨らんだ時の肺の容積)には変化が見られません。残気量の増加により、横隔膜が低位となってしまいます。さらに、加齢に伴う横隔膜の生理的老化による筋力低下も伴い、肺を膨らませることが十分に出来なくなり呼吸が浅くなってしまいます。
その他にも、老化に伴って呼吸機能の変化には、労作時の負荷に対する換気予備能力や、低酸素刺激や高炭酸ガス刺激に対する換気応答、筋肉量の減少によって最大酸素摂取量(運動耐用能)も低下が見られます。
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