≪加齢(aging)≫によるこころの変化には、どのようなものがあるかを考えて見ると、≪aging≫には、≪加齢≫という意味だけでなく、【老化】と【熟成】という意味もあります。
≪加齢≫によるこころの変化には、agingの意味に含まれる【老化】と【熟成】という結果が、それぞれに見られると考えられます。【老化】と【熟成】とを比べると、【老化】は加齢のマイナスの結果、【熟成】はプラスの結果を示していると考えられます。
たとえば、ある人の「歳を取って性格が円くなった」という、こころの変化について考えて見ると、加齢による人生経験が豊富になり、他人との関係や他人の行動を肯定的、受容的に捉えるようになって、昔の性格と比較して穏やかな性格なったと判断される事があります。これは、ある人の変化を熟成というプラスの結果として、判断したものであると言えます。
一方で、加齢によって情動にともなう動作や反応が低下したり、他人との関係や他人の行動にかかわりを持つことが億劫になっただけで、昔の性格とはさほど差は見られないと判断される事もあります。これは、ある人の変化を老化というマイナスの結果として、判断したものであると言えます。
ある人の「歳を取って性格が円くなった」というこころの変化は、かかわる(判断する)人によって、【老化】と【熟成】という相反する判断が為されることになり、事実による判断であり、本人の心根を知り得た上での判断では無いと考えられます。
ある人の加齢によるこころの変化の真実を知るには、や、現時点での生活習慣、生活環境や本人の能力など、言語・非言語コミュニケーションで示される情報を受け止めることが必要となります。
高齢者の加齢によるこころの変化を知るためには、本人とのコミュニケーションを図り、その人の生活歴、職歴、社会性、人生観、社会観、死生観を知ることが必要であります。そして、生活歴の中にある喪失体験や重大な判断、決定を迫られた場面での行動様式と結果などに加えて、その時々の生活環境、生活習慣、心身の状況を、言語・非言語コミュニケーションで示された情報を受け止めることによって知ることが必要となります。さらに、高齢者の現時点での、生活環境、生活習慣、心身の状況や近傍で起きた大きな出来事などについて知ることが必要であると考えられます。