ひとは誰でも健康でありたい、健康であり続けたいと思っています。健康のために様々な取り組みをしている方が大勢いらっしゃいます。健康診断などでからだのどこかに異常が指摘されたり、異常とはならずとも、健康を害する危険があると指摘されると、誰もが問題の解消のために必要な対策に取り組むことになります。
からだが異常にならないため、異常を改善・除去するために、異常に対して知る必要があると誰もが考えて、様々な方法で異常についての知識と対策などを得る事になります。異常についての知識を十分に得る事が出来て、適切と思われる対策を取り組みます。異常に対する取り組みによって、健康診断で示された異常が改善されたとして、からだが健康な状態に戻ったかどうか、本当に自分自身にとって正常な状態に戻ったのかは、自分自身が正常であった状態を知っていなければ、誰にもわかるものではありません。
WHOが提唱している健康寿命という「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間」という定義があります。健康寿命と寿命との差が「不健康な期間」と考えられています。WHOは、健康とは「単に病気でないというだけでなく、身体的にも精神的にも社会的にも健全な状態である」と定義していますが、健康寿命の定義を取ると、健康とは「健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる状態」と考えられます。
自分自身の健康な状態がどのようなものであるか、どのようなものであったかは、からだやこころの異常を指摘される前の状態を知っていなければわかりません。「異常を知るには正常を知らなくてはならない」と言われますが、異常についての情報と対策についてに取り組みは、世間にあふれんばかりに存在しますが、正常についての情報と維持の取り組みは、正常値、正常範囲という情報と正常値、正常範囲の維持に対しての取り組みとなっています。
個人についての正常値、正常範囲は自分自身が知ろうとしないかぎり、誰にもわかるものではありません。正常を維持する取り組みは、個人についての正常値、正常範囲を知らなければ、適切な取り組みを行う事は出来ないと言って良いと思われます。
介護ケアの中で行われているバイタルチェックも、利用者の状態は常に心がけてバイタルサインをチェックしていると思われます。介護職自身のバイタルサインを日常的にチェックし、自分自身の状態をどれだけ知っているか、健康であると思っていればこそ知ろうとしない、知る必要を感じていないと思います。
健康は一定不変のものではなく、加齢による生理的老化によって、免疫力やホメオスタシスも衰えたり、環境の変動などによっても変わって行きます。
自分自身の健康(正常)な状態を知るということは、健康を維持するためにからだのしくみがどのように働くかを知る事が出来ます。介護職は、自分自身の健康を知る事で、自分自身のこころとからだの変調や異常に対して、適切な取り組みが出来るようになるだけでなく、介護ケアの利用者のこころやからだの変調や異常についても、きめ細やかな配慮や対応が可能になると考えられます。