パニック障害は、何の理由もなく突然現れる≪パニック発作≫と、パニック発作を繰り返すうちに、発作に対する強い不安をもつ≪予期不安≫、大勢の人が集まる場所を避ける≪広場恐怖≫が三大症状と言われています。
パニック発作は、パニック障害の場合には「予期しない発作」であり、原因やきっかけが見られずに、いつどこで起きるかわからないものです。パニック発作は、恐怖症、強迫性障害、PTSD、分離不安障害、社会不安障害などにも見られますが、パニック障害の「予期しない発作」ではなく、特定の原因やきっかけによってパニック発作が見られる「状況依存性発作」であります。
予期不安とは、1回のパニック発作の後に、「もっと発作が起こるのではないか」という心配が1か月以上継続する状態であります。
広場恐怖は、パニック発作やパニック様症状が起きた時に、その場所から逃げられない、助けを得ることが出来ないと考えてしまい、一人での外出や交通機関の利用、人混み、行列、橋の上などの行動の自由が束縛される場所や状況を恐れて、回避行動を取ってしまう状態であります。
<図1>パニック障害の診断基準(出典:みんなのメンタルヘルス/厚生労働省)
<図2>パニック発作の診断基準(出典:みんなのメンタルヘルス/厚生労働省)
<図3>広場恐怖の診断基準(出典:みんなのメンタルヘルス/厚生労働省)
パニック障害のパニック発作は、大脳辺縁系にある扁桃体を中心とした「恐怖神経回路」が、過活動するために起きると考えられています。パニック障害にSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)がパニック障害に有効であることから、大脳辺縁系の「恐怖神経回路」は、主にセロトニン神経に制御されていると考えられるようになりました。
パニック障害では、パニック発作は身体内外からの(必ずしも恐怖とは関連性が無い)感覚刺激が扁桃体に伝わると、セロトニン神経の制御が不十分であるために、扁桃体に恐怖の情動の神経活動が引き起こされます。扁桃体の恐怖の神経活動が、中脳水道灰白質、青班核、傍小脳脚核、視床下部などの周辺部位に伝達され、すくみ、心拍数増加、呼吸圧迫、交感神経症状などのパニック発作の症状を引き起こします。
パニック障害の治療は、セロトニン神経の制御を行うためのSSRI(選択的セロトニン再取り込み阻害剤)や抗不安剤のBZD(ベンゾジアゼピン誘導体)を中心とした薬物療法と暴露療法や認知療法などの認知行動療法が基本とされています。