介護ケアのサービス・支援の提供を行う介護職をはじめとした医療、看護、保健、福祉などの分野で、人間とかかわる仕事をする対人援助職に多く見られる燃え尽き症候群は、介護職の離職率の高さとの関連について注目を持たれています。燃え尽き症候群(バーンアウト)は、職業上のストレスの結果として、こころだけでなくからだにも変調や異常を引き起こしてしまい、仕事の維持・継続だけでなく日常生活の安定が困難になってしまう状態であります。
介護職が燃え尽き症候群に陥りやすい仕事上の問題には、①自分のこころの状態が良くないことになかなか気づかない、②他人の面倒を見る事は出来ても自分の面倒を見られない、③十分に頑張っているのにまだ努力が足りないと思うなどがあります。仕事をやってもやってもやり過ぎになっても不全感を持ち続けてしまい、次第に燃え尽き症候群の兆候が強くなり身動きが取れなくなってしまいます。
人間の労働には、◆肉体労働、◆頭脳労働、◆感情労働の3種類があります。肉体労働で疲れたときには、基本的には身体を休めることで疲れを癒やすことが出来ます。頭脳労働で疲れたときには、脳を休めることで疲れを癒やすことが出来ます。感情労働で疲れたときには、身体や脳を休めるだけでは疲れを癒やすことは出来ず、精神的・情緒的な疲れを取ることが必要となります。
介護職は、介護ケアの提供を行うために、利用者を主体としたサービス・支援が求められています。介護職が感情をコントロールしながら、利用者のニーズに添った介護ケアを提供するための適切な態度を保たなくてはなりません。
介護職は、日常的に数多くの利用者に対して、個別性の高い介護ケアを行わなくてはなりません。感情労働のために疲労を感じていたとしても、無理な感情コントロールと精神的・情緒的な疲れを無視したまま介護ケアの提供を行ってゆき、次第に燃え尽き症候群となってしまうことになります。
燃え尽き症候群には、4つの兆候が見られます。
1.身体の兆候:頭痛、肩こり、高血圧、不眠、食欲不振、身体の免疫力・抵抗力の低下、精神的発汗など
2.考え方の兆候:マイナス思考、強い無力感や不全感、自信喪失、自己反省など
3.感情の兆候:いらいら、怒る、恨む、不安などのネガティブな感情、敗北感、自己否定感、感情の起伏の低下など
4.行動の兆候:仕事の能率の低下、物や行動への依存、物事の先送り、責任回避、引きこもり、孤立化、セルフケアの無統制など
燃え尽き症候群の兆候が見られたら、自分自身のこころやからだからSOSが出ていることを知り、適切な介護職自身が行うセルフケアだけでなく、職場の燃え尽き症候群への理解と職場の責任者・監督者が行うラインケアが必要となります。
<参考>
介護職のストレスと雇用管理のあり方/東京大学・堀田聰子他
http://web.iss.u-tokyo.ac.jp/jinzai/7-6.pdf