介護サービスなどの対人支援の場面を、利用者と支援を行う専門職者がかかわる場所を土俵と見なすと、訪問介護は利用者の土俵(生活環境)に乗ってサービス・支援の提供を行う事になります。その他の通所介護、短期入所などの自宅外へ利用者が出向く介護サービスは、介護事業者の土俵であり、入居、入所した施設も生活の場(土俵)といえますが、土俵は利用者のものというより介護事業者のものであると考えられます。
訪問介護サービスを提供する利用者に家族がある場合、利用者が家族と同居・別居にかかわらず日常的な交流があるなら、家族が相手(利用者)の土俵に乗り降りしてもそのバランスは大きく変わることはなく、相手(利用者)の土俵(生活環境)は安定していると考えられます。そのような利用者の土俵に上がって、介護職員は訪問介護サービスを実施するために、介護サービス・支援を提供して行ってゆく事になります。
利用者にとって介護職が土俵に上がることは、利用者自らの決定だとしても土俵のバランスが大きく変わる事は避けられません。介護サービスが必要になったという事実が、利用者の土俵のバランスを変えていますので、訪問介護サービスの利用によりそのバランスの変化、揺れなどを小さくし、より早くに元の安定した状態に戻すために、介護職の専門的な介護の知識、技能、態度に基づいた介護サービス・支援が必要となります。
土俵の上にすでにある家族は、利用者と一緒に土俵の上で揺れているばかりか、土俵から去ってしまったり、土俵をさらに揺さぶったりして、土俵の揺れを大きくしてしまうこともあります。介護の専門的な知識、技能、態度を身につけた介護職と家族とでは、土俵への上がり方や土俵での立ち方、見方、かかわり方が違います。
家族が上がっている土俵は、同じ土俵(利用者の生活環境)でも、相撲部屋の稽古場の土俵と見なすことが出来ます。介護サービスが必要となった土俵では、家族は横綱である利用者と考える暇も無くただひたすらに稽古に励んでいる状況かも知れません。介護サービスが提供されることになり、介護職が上がる土俵は、稽古場の土俵から国技館の土俵に変わったと見なすことが出来ます。介護職は、その土俵にいろいろな番付の力士として、横綱である利用者と取り組みをしたり、時には行事、審判、報道などになって、利用者の土俵の上やまわりでケアチームメンバーと協働して色々な役割(支援)を行います。
介護職は、家族とは異なり利用者の土俵の上にいつも上がっている、上がる事の出来る立場、役割ではありませんが、介護サービスが必要となった土俵とそのまわりで、他のチームケアメンバーと協働して色々な役割を持ちながら専門性を生かした支援を行うことになります。
301210