ある通所介護サービスで利用者の「自律」について職員間で激論となったようです。通所介護サービスの利用者4名で麻雀を楽しんでいたのですが、1名がサービス利用を終えてしまいメンバーが足りなくなってしまいました。他の通所介護サービス利用者の中では、3名の利用者ほどに麻雀の知識や力量がある方がいないため、3人麻雀をすることになってしまいました。
通所介護サービス事業所の会議で、X職員は「3人麻雀では利用者さんが麻雀を楽しめていないようで、職員に遠慮して声を掛けにくいようなので、『忙しい時には断ることもあるけれど、メンバーに加わって欲しいと職員に声を掛けてみたらどうか』と3人の利用者の自律を支える意味でも提案をしたい」と発言しました。
X職員の発言に対して、Y職員は「3人麻雀が楽しくないと思いながらも、職員に声かけずに麻雀を続けているというのは、3人の自律(自己選択⇒自己決定)による行動なのだから、X職員提案は自律を支えることにはならない」と反対の発言をしました。
X職員、Y職員のどちらも利用者の自律を支えるという考えから、X職員は3人に選択材料の提案を、Y職員は3人の選択材料の提案は不要であり、自己決定は行われているのだから尊重をすべきだという、異なる見解を示して論議はヒートアップしてしまったようです。
X職員・Y職員のどちらも利用者の考えを配慮しての発言ですが、2人とも3人の利用者の考えを態度を見て、推し量ってはいるようですが、どうも知ってはいなかったようです。
自律(自己選択⇒自己決定)という事を考えると、自律を保つ、自律を得るには、自己選択を行うための材料がなくてはなりません。X職員は、3人の利用者には選択をするための材料が無いと考え、Y職員は、選択をする材料はあり決定も行っていると考えたようです。
自律した日常生活を送るには、自己選択⇒自己決定を行う事になりますが、自己選択の材料が無くては自己決定を行う事が出来ません。X職員、Y職員のいずれも3人の利用者の気持ちを推し量り、麻雀を行っている場面での態度を見る事で、3人の自律を支えるにはどうしたらよいかという事を判断したと思われます。
X職員、Y職員も「自律を支える」と考えているのですが、2人の職員は3人の利用者の態度を見ることで、「自律」に対する個々の見解に基づいて、3人の利用者の気持ちを推し量ってしまったことが、X職員対Y職員のバトルとなった原因と考えられます。
問題解決の方法は簡単なことなのですが、X職員もY職員も自説が正しいと思っていますので、気がつくのは難しかったと思います。3人の利用者の気持ち、考えを、ひとりずつ別個の場所で「知る」事です(「確かめる」事ではありません)。X職員、Y職員共に3人の利用者の態度で判断して、議論となってしまいました、「確かめること」をしなかっただけ「自律」という事の理解はあったと思われます。
自律した日常生活を支える介護には、利用者の態度、行動で自律(自己選択⇒自己決定)を推し量る事も必要な場合もありますが、まず相手の気持ち、考えを知ることが第一です。相手の気持ち、考えを知るには、フィードバックを行いながら、相手に添えるようになる事が必要です。また、複数の利用者から知る必要がある場合には、個別性を考えて別々に知るという配慮も必要です。
301208