高齢者など支援を必要とする人々が、そのひとの能力に応じた自立・自律した日常生活を過ごすための、心身機能の重度化防止、遷延化を目指す介護は、ケアマネジメントの中心的課題となるもので、介護職だけでなくチームアプローチを行う社会資源となる全てのサービス・支援の提供者の目指すものになります。
利用者の心身の重度化(機能低下)は、高齢者の場合は加齢による生理的老化や病的老化、それに伴う生活不活発病(廃用症候群)によって、心身の個々の機能低下だけでなく全般的な低下はどうしても避けられないものとなってしまいがちです。重度化防止、遷延化への取り組みは、心身の個々の機能低下への取り組みだけでなく、日常生活での活動性を高める事で、心身機能の低下を防いだり(重度化防止)、遅らせたり(遷延化)する事が可能となります。
日常生活の状態をどのようにして把握し評価するかは、まず浮かぶのは要介護・要支援認定結果ですが、この認定結果は日常生活の介護の手間を示す尺度によって示された指標とされています。この尺度はあくまでも要介護・要支援認定のためのもので、介護の手間を示す指標とはなりますが、ケアマネジメントをはじめ、介護サービスでの活用は全く考えられていないと言えます。
国が講習や講演などで盛んに話しをしているICF(国際生活機能分類)は、日常生活の状態を知り分類(・評価)することが目的なので、日常生活を把握し評価する尺度としてはとても良いツールと考えられます。また、ケアマネジメントのアセスメントツールも日常生活の状態を知り課題を分析するためのツール(道具)ですから、アセスメントツールは、ケアプランの作成だでなく、重度化防止、遷延化のために活用可能と考えられます。
日常的な介護サービスの場面で、ICFやアセスメントツールを用いて日常生活の評価を行う事は、とても手間と時間、習熟が必要とされると考えられます。専門職の間では日常生活の状態を知る手がかりとして、ADL(日常生活活動)、IADL(手段的日常生活活動)についての評価を行うことが良く行われています。利用者の記録として、ADLやIADLを踏まえた項目と選択欄がある記録用紙に記載するようになっていたり、「Barthel index(BI)」、「FIM(機能的自立度評価表)」、「老研式活動能力指標」、「手段的日常生活活動(IADL)尺度」などのADLやIADLを評価する尺度も数多くあって、リハビリテーションの分野だけでなく、介護の分野などでも実際に活用されるようになっています。
利用者の心身の重度化防止、遷延化を目指すには、ケアマネジメントチームのメンバーが共通の日常生活の評価を行う尺度による指標を得る事が必要と考えられます。そのためには尺度がメンバー間の共通尺度についての必要な知識、技能を習得する必要があります。
介護職は専門職として、チームアプローチのメンバー個々の職能を尊重しながら、役割分担を行い介護サービス・支援の協働がスムーズに行われる事るよう、介護職員として仕事に就いたあとでも専門分野に限らず、介護に関する広い分野の知識、技能の習得は経験以上に大切なものと考えられます。
301205