重度化防止が介護保険制度の重要な柱となり、介護予防、自立(自律)支援と共に数多くの施策が行われ、介護保険制度は大転換したと言われるのは、当然と言うよりも必然な事であったと言えましょう。
超高齢化時代に入るという事で、「高齢者を社会で支える」という命題のもとで、介護保険制度は始まりました。介護保険制度は、措置から契約への転換、行政がサービス、支援を決定する仕組みから、利用者本人の意思に基づいて選択されたサービス、支援の提供を得るという福祉保健制度の大転換が行われました。
介護サービスは、「ひと(人手)」、「てま(時間)」、「かね(費用)」を必要とするもので、介護保険制度に加えて規制緩和も行われたことで、「ひと」を得るためのサービス、支援を得るための事業者の選択肢は明らかに増えましたが、十分に得られる状況になってはいないようです。「てま」を増やす事は、要介護・要支援認定による限度額設定のために、利用者の意思とは別の要因で制限があります。「かね」の部分については、老人福祉制度(措置)では、応能負担(利用者の経済的能力に応じた費用負担)であったものが、介護保険制度(契約)では応益負担(利用者が得た利益に応じた負担)となりました。
介護サービスは、「ひと」、「てま」、「かね」が、全て利用者となる高齢者とサービス、支援を提供する事業者との間で行われる契約で行われれば、重度化防止や介護予防、自立(自律)支援が表立って言われる事も無く、元々の介護の理念として実践され続けていったと思われます。
介護保険制度は、「かね」の部分について「応益負担」としながらも公的保険制度としたために、介護サービスの利用に対して、利用者に負担を求めるとともに、保険給付を行う仕組みとなりました。この保険給付の仕組みが、老人福祉制度、老人保健制度でも苦しかった国の財政を、高齢化の加速と利用者本人の契約による介護サービスの利用という仕組みによって、国の財政はさらに苦しめる事になったと考えられます。
重度化防止、介護予防、自立(自律)支援は、介護サービスの目指すもので、老人福祉制度、老人保健制度でも実践され続けて来た取り組みであります。国がこれらのことを、介護保険制度の柱としたのは、国の財政負担を軽減するための方策するためだと言えましょう。
介護が必要となり、介護保険制度のサービス、支援が必要な人々の為ではなさそうな重度化防止の施策も、ポジティブ・シンキングの観点に立って、介護職をはじめとしたケアマネジメントのチームアプローチを行うメンバーが、利用者、介護者だけでなく、社会資源のためにも協働して活用して行き、介護保険制度を維持する義務がある保険者を本来の目的へと向わせる事が必要です。
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