介護予防は、高齢者が要介護・要支援状態になることの予防と要介護・要支援状態になった場合にその状態の軽減や重度化予防を目的としています。高齢期になると、加齢による老化が明らかに見られるようになったり、多くの喪失体験が生じるなど、高齢者にとってQOLの低下やエンパワメントが困難な状況となり、日常生活の活動性が著しく低下するおそれがあります。
高齢者の活動性の低下は、一時的なものであっても老化によって心身機能が低下しているために、容易に疾病につながったり、疾病の回復が長引く、回復が困難になるなどの状態となります。高齢者の活動性の低下から生じる疾病に、生活不活発病(廃用症候群)と呼ばれるものがあります。
介護職は、最も身近な介護サービス、支援の提供者として接していることから、利用者の日常生活の変化をいち早く察知することが可能と考えられます。利用者の日常生活での活動性の低下が認められた場合には、その変化の原因を確かめて、生活不活発病(廃用症候群)を予防する必要性を検討する必要があります。
高齢者の活動性の低下には、老化による心身機能の低下や疾病が原因と考えられますので、その原因に対して適切な対応を行なった上で、生活不活発病とならないような取り組みを、ケアマネジメントを行いながらチームアプローチを生かして、サービス、支援を行ってゆく事が必要です。
介護予防と大きなつながりがある生活不活発病(廃用症候群)とは、「身体の機能を用いない、使わないことで生じる心身の機能低下によって起きる疾病」のことです。身体を使わないことで、身体的な機能だけでなく、精神的な機能も低下して、いろいろな症状を起こしてしまいます。
生活不活発病の症状
1.体の一部に起こるもの
①関節拘縮
②廃用性筋萎縮・筋力低下・筋持久性低下
③廃用性骨萎縮
④皮膚萎縮(短縮)
⑤褥瘡(床ずれ)
⑤静脈血栓症⇒肺塞栓症、など
2.全身に影響するもの
①心肺機能低下
②起立性低血圧
③消化器機能低下
a.食欲不振
b.便秘
④尿量の増加⇒ →血液量の減少(脱水)、など
3.精神や神経の働きに起こるもの
①うつ状態
②知的活動低下
③周囲への無関心
④自律神経不安定
⑤姿勢・運動調節機能低下、など
出典:障害保健福祉研究情報システム(DINF)より
高齢期の人々は、小さな環境の変化や心身の状態の変化が、日常生活で活動性が低下する原因となり、生活不活発病(廃用症候群)が容易に起こり得ます。介護予防は、日常生活での活動性の低下を予防する事、生活不活発病を予防する事も目的となります。介護職は、利用者と最も身近に接する専門職として、利用者の活動性を維持するという、介護予防の目的も理解しながら介護サービス、支援の提供が求められています。
202302