「突然」発症する認知症への悩み
介護のお悩みをうかがっていますと、「親が突然認知症になってしまい、大変困っている」という内容をよく耳にします。認知症に関する理解をせずに、認知症の方の介護をすることは大変なことです。何の心構えもなく、認知症の方の介護をする必要に迫られてしまい、途方に暮れる方がいらっしゃいます。しかし、実際には、認知症の発症は「突然」ではなかったケースが多々あります。
「突然」認知症を発症したというケース
ここで紹介する事例は、70歳台後半の夫婦と、その娘のケースです。夫婦ともに大きな病気をすることがなかったので、娘の世話を受けることなく自宅で生活をしていました。娘は元気な両親を見ていましたので、ほとんど介護に関して考えることはなかったそうです。まさか、認知症のことなど少しも意識していなかったそうです。しかし、ある日、夫が脳梗塞で倒れてしまいました。一命は取り留めましたが、24時間の世話が必要である、まったくの寝たきり生活を余儀なくされてしまいました。それまでの平穏な生活が一変してしまったせいでしょうか、妻は突然認知症を発症してしまったとのことです。
認知症にならないという「思い込み」は危険
あとから判明したことですが、妻の認知症は少しずつ進行していたようです。急激な環境の変化によって症状が一気に進行しただけであって、認知症に「突然」なったわけではありませんでした。ここでの落とし穴は、「まさか、自分の親が認知症になるわけない」という思い込みですね。注意して観察していますと、もしかすると認知症の初期症状に気がついていたかもしれません。今回のケースのような「突然」の認知症を防ぐためには、高齢者ならば誰もが認知症になりうる、という意識を持って、ご家族と接することになります。「思い込み」はいけませんよ。