高齢者医療保険制度の国が支出する医療費の増大が著しいため
高齢者福祉制度について自治体が決定する事から融通の利かなさや手間がかかるなどの指摘はあったかと思われますが、自治体が責任を持つことでその制度の運用や程度は一定に保たれていたと思われます。
高齢者医療制度は高齢者福祉制度側の受け入れ施設が都市部では著しく少ない事による社会的入院の増大があり、それに伴う入院高齢者家族の「お世話料」という名の下に徴収される高額な費用負担を、国は解消させたいと考えたかどうかわかりませんが、どちらかというと長期入院による医療費の増大を医療制度を大幅に変更することが困難であることから、他制度を作ることによって別形態の医療施設を作ってそちらに誘導しようと画策したというところでありましょう。
高齢者福祉制度は不十分な点はありながらも安定した運営がなされていて、都市部を除けば特別養護老人ホームの待機者も少なくて短期間の待期で入所できるという現実がありましたので、国が支出する医療費の増大を防ぐことと他制度を創設することによる入院医療制度の変更を画策したと言えましょう。
高齢化社会の到来で福祉制度と医療制度との融合を図りたかったがやはり無理だった
福祉制度と医療制度とではアプローチ、スタンスが水と油との関係のように全く異なります。それは直接処遇の担い手である方々の介護に対する認識、知識、技術の差が著しいものである事にも起因しています。
確かに高齢者在宅サービスを利用しようとしたところ、福祉事務所等の自治体、医療機関、施設、等々と申し込みを行う窓口が複数となっており、その煩雑さを解消すべきであると考えられましたが、介護保険制度が始まることによって介護保険制度に含まれた福祉・医療各在宅介護サービスの窓口が一つになったという良い結果は得られたものの、介護保険制度外の在宅介護サービスが残ってしまった事、ケアマネの出自、所属によるケアプラン、サービス利用の偏りなどが生じた事や制度の急変に利用者だけでなく介護保険制度を担う事業者等も制度が複雑、厳格すぎてしまい、開始当初は国の目論見とは異なったサービス利用実態となってしまいました。
在宅サービスでは福祉制度と医療制度との共働がなされるようになり、情報の共有や連携は介護保険制度開始前よりはより良くなったと思われますが、医療制度の司令塔は依然として変わりがない事から制度の融合とは程遠い現状であります。
高齢者全体を社会で支える仕組みは国の予算を増大させるばかりだという事がわかった
介護保険制度が開始され40歳以上の国民からは介護保険料を徴収して、それによって介護保険制度を運営して行こうと考えましたが、稼働年齢層がどんどん高齢化してしまい国の目論見通りには仕組みが動かず、そのたびに将来を見据えたという名目で制度設計変更が繰り返されています。
自立した生活を継続するための支援を行うという制度の根幹部分と言える部分については、国の日和見的な政策実行によりどんどん介護保険制度から切り離されて、なぜか介護保険制度開始前の形態に戻されようとしています。
全国一律の基準に基づく要介護認定システムは、国の恣意的な政策により要介護認定のもととなるデータが著しく偏ったものであるという大きな問題を抱え続けながらも、結果的には放置されてしまい現在に至っても解消されてはいません。そしてまた国の介護予算の抑制という事から、要介護認定が大きくバイアスのかかった結果となっております。
介護保険制度はその根本理念である「高齢者全体を社会で支える」ということからどんどん遠ざかっています。