介護という数値化が難しい行為を無理に数値化した
ひとによっては24時間365日必要とされ行われている行為を、「要介護認定等基準時間」という枠組みにはめ込むことで、数値では表せられない介護という行為を無理矢理に数値化し介護に必要な時間を決めつけるという事を行ってしまいました。
この要介護基準時間は介護の手間といいながらも本人の能力を「できる」、「できない」で判断する項目が非常に多くなっていて、介助をするほどでは無いが危険予防の為に見守りを行っていると言う介護の手間については全くと言って反映されていないと言えます。
高齢者実態調査モデル事業で在宅の方のタイムスタディを行った際に、実際に1週間の生活行動と介護行動を介護者の方に記録していただくという作業をお願いして、その記録を確認、整理した際にどれだけ見守りに時間と手間がかかっているかを確認しましたが、実際には見守りという行為が全くと言って良いほどに認定システムには反映されていないと思いました。
介護の手間を施設に入所、入院の方を対象として数値化した
認定システムは介護を必要とされている方が介護サービス利用を希望される場合に、その方の介護の手間がどのくらいかかるか(介護の手間がかかっているかを見るのでは無い)を数値化して客観的に判断するという考え方に基づいて作られたと国では謳いあげています。
このシステムの元になっている調査データが在宅、施設両方にいらっしゃる方の介護の実態を確かめて、介護の手間をあらわしているものであれば誰も疑義を唱えることはありません。アセスメント方式にも在宅用と施設用とがありますので、本来は在宅用と施設用と2つの基準時間を持つシステムによってそれぞれの要介護認定が行われるべきだと思います。
国は、『介護要介護度判定は「どれ位、介護サービスを行う必要があるか」を判断するものですから、これを正確に行うために介護老人福祉施設や介護療養型医療施設等の施設に入所・入院されている3,500人の高齢者について、48時間にわたり、どのような介護サービス(お世話)がどれ位の時間にわたって行われたかを調べました(この結果を「1分間タイムスタディ・データ」と呼んでいます。)。』と、要介護度認定システムの根本とも考えられる調査データを施設利用者だけを対象にして、それも2日間だけの調査を行う事で済ませてしまっています。
認定システムの結果に偏りが見られる事から恣意的に項目を挿入した
認定システムは「1分間タイムスタディ・データ」を元にして統計処理を行った結果により樹形図なるものを作成して、それに基づいて基準時間を算出するという方法を採りました。しかし、平成10年度の要介護認定に関する試行的事業で要介護認定を試行的に行ったところ、この方法では要介護度が認定対象者の実態と著しく異なるという結果が数多く出てしまうことになりました。
どうしてこのような乖離減少が起きたのかというのは、元となるデータが施設利用者だけを対象としたものですから、施行的事業で在宅の方を対象として要介護度認定を行おうとすれば、認定対象者の実態と要介護度が著しく異なるという事は自明の事であります。
そこで国は『認定調査によって把握された心身の状況に基づいて、機能や状態を総合的に評価し、わが国の要介護高齢者の状態像の典型例を中間評価項目として、樹形モデルに包含することにした。』というような弥縫策を講じて、「1分間タイムスタディ・データ」を元にした統計処理を恣意的に変更してしまいました。
「認定調査によって把握された」となっていますが、介護保険法施行以前にこの変更は行われたわけですから、まだ認定調査は正式に行われてはいないはずです。ですからこの場合の認定調査はモデル事業の結果を基にした変更の為の変更という事になります。
本来は「1分間タイムスタディ・データ」だけで行われなければならない樹形図を改変して使用するという統計的には信頼性、妥当性に疑義が生じる方法を行っており、本来は「1分間タイムスタディ」を在宅の要介護者にも行って統計処理を行って樹形図を作成すべきですが、それが出来ないという事を国は認めたくないので、未だにタイムスタディの対象者は施設利用者で、中間評価項目の利用という事で根本的な問題を覆い隠したまま在宅の要介護者の実態を反映させること無く要介護認定システムは運用され続けています。