介護事故は、いつでもどこでも起きるものであること、介護ケアの提供という行為が介護事故が発生するリスクとなることを、介護ケアの専門職として介護職は忘れてはなりません。
介護ケアの提供の場面には、介護事故が起きる①介護ケアの利用者、②介護ケアの提供者、③介護ケアの環境という3つのリスクがあります。①介護ケアの利用者が持つリスクの要素としては、心身の状況、生活習慣、生活歴などがあります。②介護ケアの提供者が持つリスクの要素としては、心身の状況、生活習慣、生活歴、職能(知識、技能、態度、経験年数)などがあります。③介護ケアの環境が持つリスクの要素としては、居住環境、施設環境、施設設備、職員体制などがあります。
介護事故が起きる①介護ケアの利用者、②介護ケアの提供者、③介護ケアの環境という3つのリスクは、それぞれが単独にリスクとなったり複合リスクとなります。介護ケアの提供者は、3つのリスクが単独に増大しないかかわり、取り組みや、複合リスクが顕在化しないために、それぞれの関係に齟齬が生まれない、生まれたとしても増大しないかかわり、取り組みが必要となります。
介護事故を起こさない方法は、極論ですが介護ケアを受けない、提供しないことです。介護ケアのサービス・支援が必要となるということは、利用者の加齢による生理的老化、病的老化などにより日常生活の自立が難しくなって来たためです。
利用者の日常生活の自立を目指すために、介護ケアの提供という介護事故のリスクを、介護ケアの利用者、提供者は負う事になります。介護ケアの提供には介護事故のリスクがあり、介護事故はいつでもどこでも起こるという事を、利用者側と提供者側それぞれが認知しておく必要があります。
介護ケアの提供という介護事故のリスクを最小限にするためには、利用者の心身の状態だけでなく、利用者の生活習慣、生活歴、人生観などを知り、利用者に添う介護ケアのサービス・支援の提供を行う取り組みを、介護職はもちろんチームケアとして取り組む必要があります。介護ケアは個別性の高いケアであることを認知して、利用者ひとりひとりの尊厳を支え、QOLを高めるためのチームケアを生かした質の高い介護ケアが求められます。