介護事故はいつでもどこでも起きるものという事は忘れてはなりません。介護事故には、防ぐべき事故、予測可能な事故と防げない事故、予測不可能な事故があり、この2つの種類の事故を弁別して、防ぐべき事故への対策から取り組む事が必要です。
介護事故のうち防ぐべき事故は、介護ケアの提供の場で介護職をはじめとしたチームケアのメンバーが、介護ケアの専門職として介護事故が起きるリスクが高いと判断することで予測されるものです。介護事故の予測や回避には、知識より介護ケアの実践の積み重ねによって、介護の専門職としての五感と直感、状況判断力が養われて行く必要があります。頭だけでなく身体全体で感じリスクの判断をして、回避が必要な場合には速やかに適切な行動に移ることが求められます。
介護ケアはマンパワーが求められる仕事であるため、いずれはそうなる事が望ましいのですが、誰もが実践を積み重ねた介護の専門職ではあり得ませんから、事業所もしくはケアチームでリスクの洗い出しとリスク回避への取り組みなどについて検討し、事業所全体で情報を共有し協働して取り組むことが必要です。
介護事故のリスクの洗い出しとリスク回避の取り組みは、介護ケアのサービス・支援の提供内容、提供手順の中から、ヒヤリハットや介護事故の情報などを参考にしながら重み付けを行う必要があります。そして、重み付けをした介護ケアのうち優先順位の高いものから、ひとつひとつの介護場面、介助動作について、リスクの洗い出しと対策、対処方法を検討してゆく必要があると考えられます。
介護事故のリスクの洗い出しとリスク回避の取り組みと同時に、介護ケアの標準化についても検討する事も良い機会だと考えられます。
介護事故のうち防ぐべき事故の取り組みが終えた時に、介護ケアの質がマイナスから零となり、防げない事故への取り組みが行われるようになって、介護ケアの質がプラスに転じるという考え方があり、介護ケアの質の向上についての取り組み方の一つとも考えられます。
介護ケアの標準化は、介護ケアの質を向上させる手立てと考えられます。標準化された介護ケアの実践は、利用者の個別性を尊重した介護ケアの実践につなげる取り組みとなるだけでなく、介護事故のリスクを回避する取り組みにもなると考えられます。