介護事故はいつでもどこでも起きること、介護ケアのサービス・支援の提供が介護事故のリスクとなることを、介護職員はもちろん介護ケアの利用者・家族も知っておく必要があります。
利用者・家族には、介護ケアのサービス・支援についての契約を行う前だけでなく、介護ケアのサービス・支援が始まったあとも介護ケアの利用者、提供者、環境が介護事故のリスクになることをくり返し説明してゆき、介護サービス事業所が利用者に応じたリスクアセスメントを行い、介護ケアの提供者、環境に対して取り組みについて説明する必要があります。
介護職員は、利用者・家族とのコミュニケーションをはかりながら、利用者のリスクアセスメントと介護サービス計画に基づいた個別性の高い介護ケアのサービス・支援を提供することで、利用者に添った介護ケアのサービス・支援を提供しなくてはなりません。
介護ケアのサービス・支援の提供が、個別性が高い利用者に添ったものであったとしても、介護事故やヒヤリハットは、介護ケアの利用者が持つ心身の状態というハザードによって、介護ケアのサービス・支援の提供を行うによってリスクとなる可能性が生じます。
介護サービス事業者は利用者と間で、介護ケアについての契約を取り交わすことで、民法に定められた「信義誠実の原則(信義則)」に縛られることになります。介護ケアに求められる信義則は、①安全配慮義務、②説明義務、③守秘義務、④記録作成保管義務とされています。介護ケアの契約書になくとも、信義則の定めを介護ケアのサービス・支援の提供者は負う事になります。
介護事故が残念ながら生じた場合には、初期の対応は利用者の安全を確保して、対応可能な処置を行い応援を求める事になります。さらに利用者の状態に応じて、リスクアセスメントで定められた手順や、職員に分担された役割に応じた行動を行うことになります。
利用者・家族への対応については、利用者は当事者であり事故の状況によっては、介護事故の現場で話しをすることが困難となる場合もあり、落ち着き次第にリスクマネージャーをはじめとして、介護サービス事業者がリスクアセスメントで定めた担当者が、「介護事故が起きたこと」に対しての謝罪の意を示すことや介護事故の状況や対応について面接を行うことが必要と考えられます。
家族に対しては、緊急連絡網で介護事故発生と状況についての連絡を行うことが、第一の対応となります。その際に、まず「介護事故が起きたこと」に対しての謝罪の意を示した上で、介護事故の状況や行った対応について、事実に基づき客観的に説明を行う事が必要となります。
介護サービス事業者は、介護事故が生じたことにより、①安全配慮義務が問われることになり、②説明義務を利用者・家族に負い、④記録作成保管義務が介護事故が生じたことにより、より一層の客観的な事実に基づいた、事故発生より対応終了までの経時的記録が求められます。
介護職は、いつでもどこでも起こる介護事故のためだけでなく、客観的な事実に基づいた減り張りのある記録の作成を常に心がけておく必要があります。介護事故にかかわらず、介護ケアのサービス・支援の提供について、客観的な資料とされるのは、介護サービス提供記録になる事を忘れてはなりません。