ノーマライゼーションの定義は、ノーマライゼーションについて考える立場や役割、社会や時代によって様々なものがあり、対象となる人々も障害者から高齢者や子どもなどを含めて来ています。
日本では1981年の国際障害者年以降に良く聞かれるようになり、国も様々な障害者施策を策定し実施してきましたが、実効性のある施策は少なく、日本のノーマライゼーションは、北欧に比べれば大きく遅れを取っており、その歩みは遅々として進んでいないように思われます。
ノーマライゼーションは、デンマーク社会省の職員であった「ノーマライゼーションの父」と呼ばれているニルス・エリク・バンク-ミケルセン(N.E.Bank-Mikkelsem)が、知的障害者親の会の活動に共鳴して、知的障害者施設の生活環境の改善への活動に乗り出したときに生まれた考え方と言葉と言われています。
デンマークのノーマライゼーション活動は、北欧各国に広がりスウェーデンの「ノーマライゼーションの育ての親」と呼ばれているベンクト・ニィリエ(Bengt Nirje)がノーマライゼーションの原理を、「ノーマライゼーションの原理とは、社会の主流となっている規範や形態に出来るだけ近い、日常生活の条件を知的障害者が得られるようにすること」と定義して、「ノーマラーぜーションの8つの原理」を実現しなくてはならないとしました。
ノーマライゼーションの8つの原理は、知的障害者に限らず普遍的なものと考えられます。
①1日のノーマルなリズム
②1週間のノーマルなリズム
③1年間のノーマルなリズム
④ライフサイクルにおけるノーマルな発達的経験
⑤ノーマルな個人の尊厳と自己決定権
⑥その文化におけるノーマルな異性との生活
⑦その社会におけるノーマルな経済的水準とそれを得る権利
⑧その地域におけるノーマルな環境と環境水準
北欧で広がったノーマライゼーション活動は、米国に移ってヴォルフ・ヴォルフェンスベルガー(Wolf Wolfensberger)が、障害者や社会的マイノリティーの立場や役割を高める生活条件や社会環境だけでなく、社会意識の改善を目指すという、独自の理念に基づく実践活動を始めました。
北欧と米国に広がった二つの流れのノーマライゼーション活動が今では一つになって、「障害者権利条約」に至っていると言えます。また、バリアフリーやユニバーサルデザインなどもノーマライゼーションの考え方に関連がある支援、活動です。
ノーマライゼーションの8つの原理は、全ての人々が目指すべき普遍的な原理と考えられます。介護職は、利用者がノーマライゼーションの8つの原理を実現するために、QOLやエンパワメント、ICFなども意識しながら、サービス、支援の提供を行わなくてはなりません。