たかが床ずれされど床ずれ
長時間、同じ姿勢で寝ていると床ずれを起こしてしまいます。これは、栄養不良や湿気がちになることによる不潔などが原因で、からだの一部分への血流が悪くなり、そのうちに皮ふや筋肉の状態が悪くなっていく症状です。
床ずれができ始めの段階では、ぷっくらと赤みを帯びるだけです。この部分が、押しても赤みを帯びたままですと、そこから進行していく可能性が大。この段階で寝たきり状態を回避しないと皮ふがただれたり、破れたりと状態が悪化していき、皮ふだけでなく筋肉や骨まで損傷することもあります。まさに、たかが床ずれ、されど床ずれです。
仰向けに寝ている場合、床ずれができやすいのは主に、後頭部、肩甲骨、ひじ、大転子部(太ももの横の骨が出っ張っている部分)、仙骨(骨盤の中央にある骨)、尾てい骨、かかとです。これらの部位は皮下組織や筋肉などが少ないことや、突き出ている部分に集中して圧力がかかりやすいことが原因で、床ずれを引き起こしやすくなっています。
床ずれ防止には座る、笑う、ゴソゴソする
床ずれは、一度発症すると治りにくいだけでなく、非常に強い痛みを伴うため、予防に努めるための介護が大切です。そのためには、こまめにからだを拭いたり、寝たきりのまま寝返りをうたせるようにしたりするのも一つの手ですが、それよりも、「座る」ことを促すのが大切です。本人にとって気分転換にもなりますし、上体を起こすことで内蔵に与える影響も変わります。
座ることで表情に変化があることは一般的に知られていますが、その中でも笑うことが床ずれ防止にもなるのです。笑うとからだの免疫力が高まり、床ずれのために起こる皮ふの炎症や感染症を、予防したり快方に向かわせたりすることがわかってきています。それにはやはり、介護者による環境作が大切と言えるでしょう。
またふだん、無意識のうちにしているゴソゴソという動きも、かかっている圧力を分散させるという意味で、床ずれ防止に効果があります。床ずれを防止するために、体重が一点にかからないように作られているエアマットやウォーターベットを使う場合がありますが、これはときに逆効果。からだが深く沈み込みすぎること、反発力がないために自発的な動作を制限するといったデメリットがあるのです。要介護者の意識がなかったり、手足にマヒがあって自発的に動かせずゴソゴソできなかったりする場合のみに使うこと、長期的には使用しないといったことに注意してください。