認知症患者の「妄想」についての悩み
認知症のご家族を介護しているかたには多くの悩みがあります。認知症は独特な症状が発生する病気ですから、自宅で介護をする場合には多くの困難があります。認知症に関する介護者の悩みの中で、一番多い悩みは「妄想」についての悩みでしょう。認知症を患う人は介護者の理解を超えるような妄想を訴えることが頻繁にあります。
よくある「帰りたいという妄想」
ここでは妄想についての悩みのケースを紹介します。皆様がよく悩まれる妄想は、実家や若いころに暮らしていた家に「帰りたいという妄想」です。認知症の患者は現在の自宅を本当の自宅であるとは認識せず、自分の実家やかつて住んでいた家に帰りたいと訴えることがあります。このとき、多くの介護者はなんとか現在の自宅が本当の自宅であることを理解させようとします。しかし、認知症の患者の妄想は非常に強いものですから、なかなかそうした現実を理解しようとはしません。無理に理解させようとすると徘徊や介護者への暴力行為などにつながりますので、介護者には大きな悩みのタネになります。
「共感すること」と「受け流すこと」の大切さ
このような悩みを解消するひとつのアドバイスがあります。それはご家族の妄想に付き合って差し上げることです。実家へ帰りたいと訴え始めた場合にはひとまず帰る支度を手伝いましょう。このときのポイントは支度にできるだけ長い時間をかけることと、支度をしながら別の話題をたくさん話しかけることです。このようなクッションを挟むことによって、「帰りたいという妄想」は忘れ去られる場合がよくあります。妄想についての悩みを解消するコツは「妄想に共感しつつ、自然に受け流すこと」なのです。皆様も認知症の介護に悩まれたときに是非とも思い出して試してみてください。