脳腫瘍とは、頭蓋骨の内側に出来る腫瘍の総称です。脳腫瘍は、腫瘍が出来た場所による分類として、原発性脳腫瘍と転移性脳腫瘍とに分類されます。原発性脳腫瘍は、脳そのものから発生する≪脳実質内腫瘍≫と、脳を包む膜や脳神経、下垂体などから発生して、脳を圧迫するように大きくなる≪脳実質外腫瘍≫とに大別され、WHOでは133種類の脳腫瘍が登録されています。
それぞれの原発性脳腫瘍は、腫瘍の分裂速度が速く、周辺の正常組織との境界が明瞭でなく、正常組織内に浸潤しているものを悪性腫瘍とされ、腫瘍の分裂速度が極めてゆっくりとしていて、周辺の正常組織との境界が明確であるものを良性腫瘍とされます。
脳腫瘍の内訳は、原発性脳腫瘍が85%、転移性脳腫瘍が15%となっています。原発性脳腫瘍の発生率は、髄膜腫・27.1%、神経膠腫・26.6%、下垂体腺腫・18.2%、神経鞘腫・10.5%の順になっていて、発生頻度は、10万人あたり15人となっています。原発性脳腫瘍の年齢階層別の発症率は、15歳未満の小児で5%、70歳以上の高齢者で25%、15~69歳の成人が70%となっています。
脳腫瘍は、頭蓋骨の内側に生じることから、ある程度の大きさになると頭蓋内圧の亢進によって①頭痛、②嘔吐、③うっ血乳頭という脳圧亢進症状の3徴候と言われる症状が腫瘍の種類に関係なく現れます。その他にも、脳腫瘍の発生部位によって、麻痺や言語障害、性格変化などの様々な症状が現れることになります。
≪脳腫瘍の局所症状≫
●運動に関連した領域:手足が動かしにくい、片麻痺など
●言語に関連した領域:思うように言葉が出てこない、失語症など
●視力に関連した領域:目がかすむ、暗い、見えにくい、複視など
●精神活動に関連した領域:意欲がわかない、寝てばかりいる、物忘れがひどい、性格の変化、うつ状態など
高齢者の脳腫瘍は、脳腫瘍に特徴的な脳圧亢進症状の3徴候が明らかではなく、認知障害や精神症状の発現で脳腫瘍が確認されることが多いと言われています。高齢者(70歳以上)の原発性脳腫瘍の頻度は、髄膜腫・46.3%、神経膠腫・28.7%と2つの疾患で全体の3/4を占めています。その他にも、下垂体腫・7.7%、悪性リンパ腫・7.5%となっています。悪性リンパ腫は、近年になって急激な増加が見られ、高齢者に多いことにより、世界的に急増していると言われています。
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