プリオン病は、神経細胞表面にある正常プリオン蛋白(正常型プリオン蛋白)が、異常構造体である異常プリオン蛋白(感染型プリオン蛋白)に変換した後に、異常プリオン蛋白が中枢神経系に蓄積することで、神経細胞が変性した結果によって生じる進行性で致死的な神経変性疾患であります。
プリオン病は、人畜共通感染症で、動物ではスクレイピー(ヒツジ)、ウシ海綿状脳症/BSE(ウシ)、慢性消耗性疾患/CWD(シカ)、猫海綿状脳症/FSE(ネコ)、伝染性ミンク脳症/TME(ミンク)などがあります。
プリオン病は、人畜共通感染症であることから、ヒト(動物)-ヒト(動物)感染が起きる可能性を持つ疾病です。感染型プリオン蛋白は、病原性微生物のように、熱処理や紫外線処理による滅菌・殺菌では感染性が落ちることはなく、病原微生物とは異なった滅菌・殺菌方法が必要となります。
ヒトのプリオン病は、1.特発性、2.遺伝性、3.獲得性の3種類に大別されています。
≪ヒトのプリオン病≫
1.特発性プリオン病:原因不明
孤発性クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)
2.遺伝性プリオン病:PrP遺伝子変異に関連
家族性CJD
ゲルストマン・ストロイスラー・シャインカー病(GSS)
致死性家族性不眠症(FFI)
3.獲得性プリオン病:プリオンへの曝露
クールー
医原性CJD(硬膜移植、下垂体製剤、角膜移植、脳外科手術、などによる)
変異型CJD(vCJD)
ヒトのプリオン病の発症率は、100万人あたり年間ほぼ1人となっています。発症する疾病の3/4が孤発性CFJで、男女差は無く、発病は、50~70歳代に多いとされています。わが国の病型ごとの頻度は、孤発性CJD:76.4%、遺伝性プリオン病:18.7%、獲得性プリオン病:4.5%であります。
プリオン病は、多く見られるCJDの典型例では、急速進行性の認知症、錐体路/錐体外路徴候、ミオクローヌス、小脳失調、視症状、無動性無言などの精神神経徴候症状を呈しますが、比較的緩徐進行性の小脳失調や認知症などの精神神経徴候を呈する非典型例もあることに留意が必要と言われています。
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