≪ビタミンB12欠乏症≫
ビタミンB12は、体内では肝臓や腎臓に4~5mg存在するとされており、1日最低必要量が2.5μgであることから、ビタミンB12の欠乏症となるには、疾病の原因が生じてから発症までに、数年の経過が必要とされています。
ビタミンB12欠乏症は、多くが腸管からの吸収障害によるものと考えられていますが、菜食主義による摂取不足などでも生じるとされています。
<原因>
1.摂取不足:菜食主義
2.吸収不全:抗内因子抗体、抗胃壁細胞抗体、手術後(胃切除後、回腸切除後)、腸内細菌増殖、クローン病、膵臓機能不全、胃酸の分泌低下(高齢者に多い)、など
3.貯留不足:肝機能低下
4.薬剤:コルヒチン、ネオマイシン、オメプラゾール、メトホルミン
5.先天性:トランスコバラミンⅡ欠損、内因子欠損
<症状>
●中年期以降で記憶障害と認知機能障害
●錐体路徴候による歩行障害
●四肢の位置覚、振動覚低下などの感覚障害
●巨赤芽球性貧血(悪性貧血)
●認知症
アルツハイマー病を含む認知症患者全体の25%に、ビタミンB12が低値の状態があるとされていますが、ビタミンB12が低値の認知症患者にビタミンB12を投与しても、認知症の改善が見られるという確証は得られていません。
≪葉酸欠乏症≫
葉酸欠乏症は、葉酸の欠乏(葉酸値<2.4ng/ml)によって生じる疾病であります。葉酸欠乏症は、末梢神経障害、脳神経障害、脊髄障害、脳血管障害、認知症などの原因となることが知られています。
<原因>
1.摂取不足:貧困、偏食、人工栄養、アルコール摂取、静脈栄養
2.吸収障害:吸収不良症候群、盲係蹄症候群
3.利用障害:代謝障害、体内移送障害
4.需要増大:妊娠、溶血性貧血、白血病、MDS、甲状腺機能亢進症
<症状>
●見当識障害、記憶障害、保続などの認知機能障害
●無関心、集中力低下、意欲低下、抑うつ状態などの精神症状
●脊髄後索障害、側索障害、末梢神経障害などの神経症状
ビタミンB12、葉酸欠乏症による認知症では、ビタミン(ビタミンB12、葉酸)補充療法を行うことで認知機能が改善され、血中のホモシステイン値が正常に戻ったと報告されています。葉酸、ビタミンB12欠乏症は、ホモシステイン代謝との関係から、高ホモシステイン血症を生じるとされています。高ホモシステイン血症がアルツハイマー病の危険因子であると言われていることから、ビタミン補充療法を行うことが、アルツハイマー病の予防や発症の遷延化の効果が期待されるとする報告も見られます。
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