高齢者は、加齢に伴って生理的老化を自覚し、さらには生活習慣病などにより病的老化が見られるようになれば、誰しも健康や日常生活についての不安感を持つことになりますが、生活習慣病などによる病的老化に対しては、疾病の治療を行うことで、不安感の解消につながると考えられます。
しかし、特別に治療が必要とされる疾病が無い場合に、不安感によって強い身体症状が現れることがあり、119番への救急搬送依頼を自ら行い、救急隊到着時には症状は軽減、消失しており、念のために医療機関への受診をするものの、入院に必要性は無く、自宅への帰宅には公共交通機関を使うという状況であることから、たびたびの救急隊の出動が、救急隊の活動を妨げると社会問題化することになりました。
高齢者の不調には、客観的に説明が出来るような疾病が確認出来ないにもかかわらず、身体的・精神的な不調が現れ、医療機関に受診しても医師からは心配ないと言われても、治療や入院の必要があると思い込んでしまい、ドクターショッピングに走ることとなり、数多くの医療機関への受診をくり返して、薬剤の重複投薬や相互作用などの問題が生じることがあります。
不安・不調に伴う自覚症状には、●心悸亢進、●胸部圧迫感、●胃部膨満感、●腹痛、●便秘、●残尿感、●四肢冷感、●頭痛、●めまい、●肩こり、●耳鳴り、●吐き気、●冷や汗、●手足のしびれ、●食欲不振、●不眠などがあります。
高齢者の不安・不調には、客観的に説明が出来る疾病が確認されないことから、環境的な要因が大きく影響をおよぼしていると考えられています。治療が必要となる疾病が無くとも不安・不調の状態が継続、繰り返されることで、神経症性障害となりその治療が必要となることにもなりかねません。
≪高齢者特有の環境要因≫
①身体的要因:加齢に伴う生理的・病的老化、身体疾患の合併など
②社会経済的要因:退職、社会的役割の喪失など
③対人的要因:家庭内葛藤、配偶者・近親者・友人などとの離・死別、孤独など
≪高齢期神経症性障害の特徴≫
①様々な症状が多彩に出現し、複雑
②心気と不安・抑うつの混在が最も多い
③心気的訴えは、多訴的・不定愁訴的
④心気状態が慢性化すると依存的、疾病逃避的になる
⑤医源的な要因が発病や増悪因子として関与しやすい
高齢者の不安・不調への対応は、≪こころ≫や≪からだ≫に不調や症状が続いていることを受け止めて、頭から否定せずに、本人の気持ちに添うような働きかけが必要となります。その一方で、依存的になってしまい援助者を独占しようとする可能性があり、適度な距離感と立ち位置を図りながら、巻き込まれてしまう事をチュ医師無くてはなりません。そして、本人の生活歴、社会歴、性格特性などを知る事で、生活環境や生活習慣などの調整を図ることが必要と考えられます。
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