不眠とは、就床したにもかかわらず「眠りたいのに眠れない」、「眠ろうと思っても眠れない」、「眠らなくてはならないのに眠れない」という≪入眠困難≫や、夜中に目が醒めてしまい、入眠困難と同じように再入眠することが難しくなる≪睡眠中断≫、起床する予定の時間よりも、朝のかなり早い時間に目覚めてしまう≪早朝覚醒≫が見られる状態と考えられます。
高齢者の不眠は、とても多く見られる状態で、70歳以上では30%近くに達するとされています。高齢者に限らず、だれにでも不眠を経験することはありますが、不眠の状態が毎晩のように繰り返されると、眠ることに対する不安が生じることになります。眠ることに対する不安な思いが固着してしまうと、睡眠という行為に対してリラックスして向かう事が難しくなり、睡眠に向かうために必要な心身の状態を整えて行くことが出来なくなってしまいます。
高齢者は、加齢による生理的老化に伴って、体内時計に変化が見られて、若年者に比べると睡眠の質の低下や睡眠パターンの前倒し、就寝時の体温低下の幅が減少したり、最低体温となる時間も前倒しになることなどが生じて来ます。若年者が不眠と感じる≪入眠困難≫や≪睡眠中断≫、≪早朝覚醒≫は、高齢者にとっては生理的なものであるとも考える事が出来ます。
<図1>若年者と高齢者の睡眠の比較
不眠の解消は、原因となる事象を解決、解消、改善などすることが必要ですが、特別な原因も無く不眠となる場合には、眠りや眠ることに対しての気持ち、考え方、向かい方などを工夫して行かなければならないと思われます。
ヒトは睡眠を取れない断眠状態が続くと幻覚・妄想などが生じて精神に変調を来してしまい、さらには体重減少や免疫力低下などの身体的な変調も引き起こされるとされています。睡眠は、からだとこころのメンテナンス時間でありますから、メンテナンスが出来なければ当然ながら正常な心身の状態を保つことは困難となり、トラブルが当然ながら生じることになります。
ヒトの身体は、からだとこころのメンテナンスを行うために、自然な状態であれば眠りに就くようにいて、一時的な不眠や睡眠時間の短縮が引き起こされたとしても、総体的には必要な睡眠時間を若年者も高齢者も取るようになっています。健康維持のためには、意図的な寝だめは好ましいものではありませんが、生理的なものはこころとからだが求めているものでやむを得ないと考えられます。
<図3>年代ごとの入床、起床時刻
<図1>~<図3>出典:e-ヘルスネット/厚生労働省
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