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-せん妄-入院中の高齢者などでは40~67%で発症するせん妄予防のケア法4つのポイント

せん妄は、急激な発症に始まり、一過性(数時間から数日)の可逆性を特徴とする、軽度の意識障害あるいは意識変容が、高齢者に多く見られる症状とされています。せん妄の症状は、あたかも認知症や精神障害のような混乱と興奮が見られる場合と、うつや不眠のように黙り込んだり、強い眠気に襲われる場合があります。

入院中の患者で発生するせん妄の発症率は、一般の入院患者では、10~15%で、高齢者、術後、熱傷、電解質異常等のハイリスク患者では、40~67%とされています。高齢者介護施設に入居している半数近くには、介護中のある段階でせん妄を経験すると言われています。

≪せん妄の診断基準≫

1.意識障害:注意集中、維持、転動する能力の低下を伴う。意識の清明度の低下

2.認知機能・知覚の異常:記憶欠損、見当識障害、幻覚、妄想、錯乱などが見られる

3.日内変動:1日の中で症状が変動する傾向がある

4.原因となる身体状態(疾病)や薬剤の使用が存在する

≪せん妄の症状≫

●認知機能低下

●注意集中困難

●見当識障害

●興奮、錯乱、動揺

●幻覚、妄想

●記銘力障害

●活動性低下

●不眠(昼夜覚醒リズムの障害)、傾眠

●不穏

≪せん妄の種類と特徴≫

1.過活動型:興奮、幻覚、幻触、妄想、不眠、など

⇒興奮、過活動が主体。夜間徘徊。転倒、点滴抜去などがある。

2.活動低下型:無表情、無気力、傾眠、など

⇒低活動ではあるが、意識障害、内的不穏は持続している。うつ病や不眠症と間違いやすい。

3.混合型:過活動型と活動低下型の特徴が混在

⇒上記二つの特徴が混在するため、せん妄の主症状は興奮と考えてしまうのは間違った判断となる。

せん妄の危険因子としては、①準備因子、②誘発因子、③直接因子の3種類に分類されます。

●準備因子:脳の老化や慢性的な脆弱性を示し、加齢、器質性脳疾患の既往(脳血管障害、認知症疾患など)、動脈硬化性疾患(高血圧、糖尿病など)、せん妄の既往などが含まれる。

●誘発因子:心理的負荷や状況要因であり、環境の変化や身体疾患などによる身体的拘束、精神的ストレス、睡眠不足、感覚遮断または感覚過剰などが含まれる。

●直接因子:中枢神経系に影響を与えて急性の意識障害を生じさせる器質的要因であり、中枢神経疾患(脳血管障害、脳炎、脳腫瘍、癌性髄膜炎、頭部外傷など)、二次的に脳機能に影響を及ぼす全身性疾患(肺炎などの感染症、心不全、心筋梗塞、不整脈、肝・腎機能障害など)、薬物や化学物質中毒、アルコールや睡眠薬の離脱などが挙げられる。

直接因子のうちで、せん妄を起こしやすい薬物としては、向精神薬(抗不安薬、抗けいれん薬、抗うつ薬、睡眠導入薬)、抗パーキンソン病薬、抗コリン薬、鎮痛薬、循環器薬(抗不整脈薬、ジギタリス製剤、降圧薬)、消化器薬(鎮痙薬、H2ブロッカー)、制吐薬、抗ヒスタミン薬、ステロイドなどがあります。

高齢者では多くの薬物が使用されていることが多く、特に複数の薬物で抗コリン作用が相加されることなどにより、せん妄の危険度が高くなります。

高齢者が持つせん妄の発症要因は、●感染症(尿路感染症など)、●複数の身体的疾患、●便秘、●脱水症・栄養失調、●激しい痛み、●薬の服用(市販薬を含む)、●過度の飲酒、●急な禁酒、または薬(特に睡眠薬)の服用の中止などがあります。

せん妄を予防するために求められるケアとしては、①睡眠・覚醒リズム保持、②見当識改善のための環境、③安心・安全に過ごせる環境、④良好な全身状態の維持などが必要とされています。

≪せん妄予防のケア≫

①睡眠・覚醒リズム保持

⇒昼夜のめりはりをつける生活習慣

②見当識改善のための環境

⇒部屋の明るさを調整(昼は明るく、夜は暗く。状況によっては、夜間は薄明かり)

⇒カレンダーや時計を身近に置く事で、日付・時間の手がかりを得る

⇒視覚や聴覚の障害に対する配慮、騒音を減らす、眼鏡、補聴器の使用を検討

③安心・安全に過ごせる環境

⇒自宅で使用していた使い慣れたものを置くことで慣れ親しんだ環境に近づける

⇒家庭的雰囲気を保つ、可能な範囲で家族や友人の面会時間を増やす

⇒一度に多くの刺激を与えない、良好なコミュニケーションをはかる

⇒障害物、危険物(はさみ、ナイフなど)の除去

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