日本人の腋下温の平均は、36.89±0.34℃とされています。体温は、前視床下部に位置する体温調節中枢が調節されています。視床下部の体温調節中枢が、筋肉や肝臓の代謝活動による熱産生を、皮膚や肺による熱放散で調節しているため、身体は普段かなり安定した体温を保持していますが、ヒトそれぞれの心身の状況によって、体温には個人差が見られます。
体温は、体内時計によってコントロールされている概日リズム(サーカディアンリズム)に従って、一日のうちで一定の幅を保持しながら変動しており、早朝の4時から6時に最も低くなり、16時から18時にピークとなり、体温の変動幅は、0.5~1℃とされています。女性の平均体温は36.9℃で、男性の平均体温は36.7℃で、平均体温が高い傾向が見られますが、日中の変動幅は大きくはなかったと言われています。
平熱(体温の正常値)とは、普通の気温(22.7~24.4℃)に保たれた室内において、快適な格好をし、空腹でない状態にある健康な成人の値(体温)となります。時間帯のほかに、飲食物や喫煙も口腔体温を大きく左右します。飲食や喫煙をしてから20分以内、または温浴や激しい運動をしてから1時間以内に計った体温については、体温の正常値を計測することが出来ていない、あるいは平熱として判断することは難しいと考えられます。
<図2>成人と高齢者の平熱の違い(出典:テルモ体温研究所)
高齢者では、体温を保つために発熱を起こす能力が障害されると言われており、体温の調整能が成人の時より10%ほど低下しています。そのため、高齢者の平熱は、36.66±0.42℃であり、成人よりも0.2℃ほど低く、また日内変動も少ないとされています。そのために、高齢者では重症感染症であっても、成人にすると微熱程度の発熱しか認められないことがあります。
微熱とは、37.0℃から37.9℃の発熱が一定期間持続するか、一定期間に繰り返し出現する場合を言います。結核の中蔓延国である日本においては、3週間を超えるような微熱が続く場合は、結核の恐れがあるといわれています。ほかにも慢性感染症、寄生虫疾患、悪性腫瘍(癌)、鉄欠乏性貧血、甲状腺機能亢進症、膠原病、神経症・欝状態、慢性疲労症候群などのさまざまな疾患で微熱が見られます。
<図2>若者と高齢者との体温リズムの違い(出典:テルモ体温研究所)
同じ人でも体温が上下するため、体調の安定した一日のうちに、①起床時、②午前、③午後、④就寝時に検温し、何日間か日を置いて測ることで、本人の平熱の「基準値」をはっきりさせておく方法が推奨されています。日中の検温は、食事の影響を受けずに体温を測ることが出来る、食前か食間に行わなくてはなりません。
ちなみに、検温の方法は、日本、ロシア、東欧ではワキで測るのが一般的で、それ以外の国では、口腔温、直腸温が常用されています。
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