ヒトの体温は、乳幼児では37℃台ですが、10歳を過ぎると安定して平均36.89±0.34℃(腋下温)となります。加齢による生理的老化に伴って高齢者では、体温が約0.2℃程度低くなり、平均36.66±0.42℃となって行きます。
ヒトの体温は、朝は低く、夕方は約0.5~1.0℃高くなるという日内変動が見られます。体温の変動は、日内変動だけで無く、気温や室温、心身の状態などによって生理的に引き起こされることがあります。
≪体温上昇≫
①日内変動
②室温や気温の上昇
③運動、入浴、食事などの活動後
④精神的ストレス、うつ病、自律神経失調、更年期、疲労など
⑤交感神経の興奮
⑥脱水、鉄欠乏性貧血、女性ホルモンのバランス、甲状腺ホルモンの上昇など
⑦抗がん剤、インターフェロン、抗生物質、抗ヒスタミン薬などの服用
⑧感冒後微熱(風邪のあとに数ヶ月微熱が続く事がある)
体温の生理的上昇は、風邪や炎症のために生じる炎症性サイトカインによって、プロスタグランジンE2(PGE2)産生が誘導されることで生じる発熱とは、体温が上昇するメカニズムが異なることから高体温症と呼ばれることがあります。高体温症では解熱剤を服用しても、当然ですが体温が低下することはありません。
発熱だけで他の症状が見られない場合には、風邪(感冒)であることが多いと考えられますが、高齢者の場合には、症状が発熱だけでも肺炎(寝たきりの場合は誤嚥性肺炎)、腎盂腎炎、感染性心内膜炎、悪性腫瘍などや結核や膠原病、HIV感染症などの疾病が隠れていることがあり注意が必要となります。
≪高齢者の発熱と疾病≫
①感染症:肺炎、腎盂炎、心内膜炎、胆管炎、関節や筋肉、脳・髄膜の感染症
②悪性腫瘍:血液のがんや大腸がん、腎がんなど各臓器の悪性腫瘍
③膠原病:関節リウマチ、リウマチ性多発筋痛症、側頭動脈炎、SLEなど
④その他:寄生虫、アレルギーなど
発熱以外の他の症状がないと思える場合でも、①局所症状(膝が腫れて痛くないか、背中に痛みがないか等)の有無を確かめることや、②感染源(カテーテル、注射、褥瘡、虫歯等)となるものが無いか調べること、③心身の状態を確かめることなどが大切となります。
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