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-咀嚼力低下-義歯では十分に得られることが出来ない咀嚼機能を維持するための咀嚼力

食事内容に伴う栄養摂取状況の善し悪しは、健康寿命の独立的な予知因子だけでなく、健康の増進とQOLを高める重要な要因といわれています。加齢に伴う生理的・病的老化による歯の喪失は、栄養摂取状況に影響を及ぼす事になり、栄養素の欠乏や低下だけでなく、食物の嗜好の変化に関連すると考えられています。

咀嚼機能とは、食物を口に摂取してから、咬断(切断)、粉砕、混合、食塊形成などの機能を包括したもので、口腔内の多くの器官が協働することで行われています。咀嚼機能を維持している高齢者は、食事摂取状況が良好であると考えられており、高齢者の咀嚼能力を保つためには、残存歯数を維持して、咀嚼力を確保することの重要性があるとされています。

咀嚼力の指標とされている第一大臼歯の咀嚼力は、20歳代まで増加して、その後は加齢と共に徐々に減少し、60歳代では20歳代の約2/3となり、義歯になると咀嚼力の減少率はさらに高くなるという報告があります。

75~79歳の高齢者では、20本以上の残存歯を有している者の割合は27.1%で、残存歯数は平均10.7本という報告があります。残存歯数を維持し咀嚼力を確保することが、高齢者の咀嚼機能を維持するためには重要であることが考えられます。

名古屋女子大学が「高齢者が咀嚼能力と食事摂取状況の関連」について調査研究を行った結果(http://libweb.nagoya-wu.ac.jp/kiyo/kiyo54/kasei/kojin/kasei89-98.pdf)によると、高齢者が咀嚼困難と感じる要因としては、残存歯数や咀嚼力があり、咀嚼能力と食事摂取状況との間では、総エネルギー摂取量や摂取食物の種類などについて、統計的に有意な差があることなどが明らかにされています。

●残存歯数:咀嚼に困難さを感じるかどうかは、残存歯数に相関(影響)が見られる。義歯を使用していたとしても、残存歯が少ないと噛みにくく、多いと噛みやすい

●咀嚼力:咀嚼に困難さを感じるかどうかは、咀嚼力に相関が見られる。残存歯数が多いほど咀嚼力は高く、義歯数が多いほど咀嚼力は低くなる

●総エネルギー摂取量:[噛めない群・1473kcal/日]≪【普通群・1751kcal/日】

●脂質エネルギー比:[噛めない群]≪【普通群】

●炭水化物エネルギー比:[噛めない群]≫【普通群】

⇒[噛めない群]はエネルギー摂取を炭水化物に頼っている

●栄養素:[噛めない群]<【普通群】

⇒[噛めない群]は、カルシウム、鉄、ビタミンA、ビタミンB1、ビタミンB2、ビタミンC、多価不飽和脂肪酸など、ほとんどの栄養素の摂取量が少ない傾向がある

●ビタミンD:[噛めない群]≫【普通群】

●穀類:[噛めない群]≫【普通群】

●卵類:[噛めない群]≫【普通群】

●果物類:[噛めない群]>【普通群】

●穀類・卵類・果物類以外*の食品:[噛めない群]<【普通群】

*豆類、緑黄色野菜類、その他の野菜類、魚介類、肉類、乳類、油脂類、菓子類など

※[噛めない群]≪【普通群】は、【普通群】の数値が統計的に有意に多い

※[噛めない群]≫【普通群】は、[噛めない群]の数値が統計的に有意に多い

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