スキントラブルは、疾病や障害に伴ってADLが低下することによって、随伴症状として生じることが多いと考えられます。スキントラブルとなる要因は、①外力(圧迫、ズレ、剪断力)、②尿、便、汗、③真菌・細菌、④湿度・温度、⑤皮脂の分泌過剰・不足、⑥栄養障害などがあります。
皮膚は、外からの有害物質の侵入を防ぎ、体内の水分の喪失を防ぐ重要なバリアとしての役割を果たしています。皮膚のバリア機能は高齢者では低下し、外からの刺激により、湿疹やかぶれ、病原微生物(細菌・真菌)の繁殖によって、痒みを伴う皮膚疾患が起こりやすくなります。また、長年にわたって、紫外線に曝露された皮膚には、しわやしみなどの見た目の変化や、皮膚癌が発生するなどの様々な問題が生じることがあります。
健康な皮膚には、新陳代謝が活発に行われながらも、保湿機能が保たれることで、およそ70%の水分を含んでいます。高齢者の皮膚の保湿機能が低下する要因としては、皮脂の分泌低下がかかわっているといわれており、皮脂量は20~30歳をピークとして、その後は加齢と共に減少するといわれています。
老人性乾皮症の原因は、①冬季の湿度低下、②熱い風呂の入浴と過剰な洗浄・擦過、③皮脂分泌減少、④表皮角化細胞のターンオーバーの延長などが考えられます。老人性乾皮症(老人性掻痒症)には、①室内を加湿すること、②低温の風呂入浴と強く皮膚をこすらないこと、③角層表面の水分を補給・保持することなどの対応が必要となります。
敏感肌(脆弱な皮膚)となる原因には、①加齢に伴う生理的老化による皮膚の菲薄化、②角質水分量低下による乾燥、③角質膨潤による浸軟、④皮膚の水分過剰による浮腫などがあります。敏感肌となることで、≪感覚刺激の感受性亢進≫、≪バリア機能低下≫、≪潜在的皮膚炎症≫などが生じることにより、スキントラブルが引き起こされると考えられます。
高齢者のおむつによるスキントラブルの原因には、①皮膚のバリア機能の低下による細菌の繁殖、②尿、便、汗、垢などの排出物や代謝物、おむつの素材による接触刺激や化学刺激、③おむつ内の高湿度による真菌の繁殖などがあります。
スキントラブルを予防するためには、①角層の機能を保護すること、②汗や便・尿による化学的刺激には、弱酸性石けんで洗浄すること③皮膚は乾きすぎても湿りすぎてもいけないことなどを留意する必要があると考えられます。
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